あまさ、ひとつぶ(10)
「!!!たっ…たけ、ちさ…」
ーチュッ…、と柔らかく吸ってくれる
やや薄くて、柔らかな唇の感触に。
私はー跳ね上がりそうに鼓動を強くする
心臓を
押さえることも、できない…!
厳しくって
ちょっと怖くて…
そんな武市さんに…そうされていると
いうことが。
眩暈のするようなー光景。
(武市…さ…っ)
ー息が止まるかと思った時間は。
ほんの数秒だったかもしれない。
でもー
長い長い、長い時に
閉じこめられたように。私は動けなかった。
「…ん、いいかな。」
柔らかな。感触が離れた。
「止まったよ。…百合さん。
…百合さん?」
…真っ赤な顔で呆然としていた私は
呼ばれている事にようやく気づいた。
「は、はは、はいっっ!」
…思わず、声が上ずってしまった。
ー武市さんは。側にあった小箱の中から
貝に入った、軟膏らしい薬を
指先で掬って塗って。
きれいな晒しを巻いてくれた。
「これでいいよ。」
晒しを巻いた手をそっと離してくれた。