あまさ、ひとつぶ(9)
きゅっ
ふいに。
右手が温かいものにくるまれた。
「え…?」
思わず、涙目を開くと
それはーちょっと節のある長い指…
大きな、あたたかい手、だった。
「…来なさい。薬を付けないと
化膿する」
きゅっと引っ張られた事で。
私はー武市さんに手をつながれている
事がわかった。
「女将、申し訳ないがここを頼みます」
「大丈夫ですよってに」
私は。
武市さんの部屋に連れてこられて
座布団に座らされると、手を取られた。
「大分出血したな…」
ー懐紙で、そっと拭ってくれるけど
ちょうど血流の多い場所なのか、なかなか血が止まって行かなくて。
ー紅い血の玉がぷくりと盛り上がる。
「…すまない。少ししみるよ」ー武市さんはそう言ってー
私の指を…ふわりと口に含んだ。