あまさ、ひとつぶ(7)


私は。

火吹き竹を持ったまま。
深く息を吐いた。


…迷惑…かけちゃったな…。


胸の中に。涙みたいな
悲しい思いがじわりと湧いた…。

「武市さん…」


怪しい闖入者どころか

世話の焼ける子供だって思ったん
だろうな…。

ー私は。

自分の胸に湧いた気持ちが悲しくて
下を向くしかなかった…。




ー夕餉の時刻も済み

私は、今度は箱膳と言って
食事をした後に、お膳ごと
蓋みたいなのをして仕舞える
足のついたお膳を片づけていた

「百合ちゃん、気をつけてやりよし?
転ばんようにな」

「はあいっ!」

女将さんが、受け取ってくれながら
言う。

けど、私は。
これだけは失敗なく
やり終えたかった。

(みんなの役に立つんだもん。
ー頑張らなきゃ!)


気合いを入れて広間と厨を往復して片付け。

そして私は、離れの宴会場の片付けも
手伝おうと、焼き物のお皿などを
重ねて廊下に出た。
何枚か重ねたけど、このくらいは…

う…

ちょっとよろよろする。

広間を出て。厨まで、
安定しない視界の中、踏ん張って
運び出した。


「うん、せっ…と、よいしょ…」


ー重ねたお皿がゆらゆらっ、とよろめいた。

「わっ…!危…っ」

思わず手を前に出して。お皿を支えようとした
私はー
バランスを崩して、廊下にしたたかに
転んだ。





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