あまさ、ひとつぶ(6)


「上手く焚けないのか…」

「あっ…は…はい…っ」

ーどぎまぎしながら、答えると。

武市さんは、側に立てかけてあった
金属の棒を持って。
私が焚こうとしていた、火口の中の
くすぶる薪を軽く持ち上げて

それから、竹をくわえてそっと
息を吹き込む。

ー次の瞬間。

火口が、ぼうっと滑らかに
輝き始めた。

ーくすぶるだけだった薪が
息を吹き返したみたいに元気よく
燃え始めた。




「あっ…」

そうか…その金属の棒は
そうやって使うものだったんだ…。

(酸素がないと、ものは燃えないって
学校で習ったっけ…)

「ありがとうございます!武市さん!」

凄い!!
私があんなに苦労していた焚き付けを
一度で成功させちゃった…

「…やり方が分からない時には
宿のものにきちんと聞きなさい。

君の居た未来では知らないが…
この時代のものは燃えやすいものが
多い」

「ー!は…はい…っ」

ー静かな口調に。
私は…はっとして…頭を下げた。

そ…

そう、だよね…。


無理をして、飛び火でもさせたら…
みんなに迷惑かけちゃう
ところだったんだ…


「ごめんなさ…あ、いえっ…
ありがとうございます!」

ー私は。
急いで頭を下げる。


「…気をつけなさい」

ー来た時と同じように。

武市さんは、それだけ言って
さっさと行ってしまった。





prev | top | next
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -