あまさ、ひとつぶ(5)
ー息をするのも忘れるほど。
びっくりして…
でも。動けなくて。
ー私はーその優しい手つきに
ー震えていた。
「…いいよ」
…ようやく手が離れ。
武市さんが離れると。
わたしは、ためていた息を、ようやく
吸えた。
「あ……ありがとう…ございますっ…でも、どうして…」
ー武市さんは、私の顔を拭いた手拭いを
くるりと返して。見せた。
「わー!!」
…その手拭いは…薄黒く汚れていた。
…わ、私の顔…
煤で真っ黒だったんだ…。
ー黒かった顔は、今度は…熱を持ち始めた。
た、武市さんに…
そんな真っ黒に汚れた顔を見られたなんて…!!
わ、私のドジ…
ー顔を上げられない、私のそばに
武市さんが、また屈んで。
置いておいた火吹き竹を取った。