あまさ、ひとつぶ(3)
「何をしているんだ?」
ー涙をぼろぼろこぼしている
私の後ろから、声がかかった。
(この声は…)
振り返ると。
夕日を背中に背負って。
…驚いた顔をした
武市さんが立っていた。
「あっ、た、武市さんおかえりなさい!
…今、お風呂の下を焚きつけていたんです」
私は、慌てて
ボロボロこぼれていた涙を
手でこすった。
ー途端に。
「止めなさい!」ー叱責が飛んだ。
「えっ…」
「…君は今、自分の顔が
どうなっているのかわかっているのか」
「???」
…顔?
なにか付いてるのかな。
…顔をまじまじと触っていたら。
武市さんは、はぁ、とため息を付きながら
どこかへ行ってしまった。
(な、なにか…
しちゃったのかな。
武市さんをまた怒らせちゃったのかな)