小さな嫉妬(2)


「―あのお店のお料理、とってもおいしかったですね」
「ああ、そうだね」

半平太さんが予約してくれたお店は、都内の夜景が一望出来る素敵なところだった。けれど、お店に入ってからも彼の態度は余所余所しくて、それは半平太さんのマンションにいる今も同じだった。

「あの、半平太さん…」
「ん、何だい?」
「いえ…。何でもないです」

自分から話し掛けたものの、「このワンピース変ですか?」とはやっぱり聞けなかった。もし半平太さんが頷いたら、どんな顔をしたら良いかわからなかった。

「小娘、」

そんなことを考えていた矢先、先に半平太さんが口を開いた。

「大分遅くなってしまったね。明日は早いんだろう?家まで送るよ」
「!」

(どうして…!?)

淡々と話す彼に、ぽろぽろと滴が頬に流れる。急に泣き始めた私を見た半平太さんは、驚いた表情で傍に腰を下ろした。

「小娘…?どうし…」
「半平太さんっ!」

溢れてくる涙を手で拭い、私は半平太さんを見上げた。

「どうしてそんなに素っ気ないんですかっ…。私、今日をずっと楽しみにしてたのに…!このワンピースが変だったから、もう一緒にいたくなかったんですか…!?」

ぐしゃぐしゃになった顔を俯かせて玄関に向かおうとすると、急に左腕をぎゅっと掴まれる。それを振り払おうとする間もなく、私の身体はいつの間にか彼の腕の中にいた。

「嫌っ!離して…!」
「…そのワンピースは、よく似合ってるよ」
「嘘ですっ!」
「嘘じゃない」

彼がそう答えた途端、身体がふわっと宙に浮く。そして半平太さんは、私をベッドに座らせると、その前に膝をついて屈んだ。

「…ただ、」
「…?きゃっ!半平太さ…!」

つっと太股に伝う彼の手に、背中がぞくっと反応する。慌ててそれを止めようとしたのも虚しく、私の手にもう力は入らなかった。

「小娘は、他の男にどんな目で見られていたか分かってる?」
「え?」

どういう意味ですか、と聞き返そうとすると、半平太さんはちょっとむっとした顔で私から視線を逸らした。

「…それは、丈が短すぎる」
「た…け…?…もしかして、ずっとそれで不機嫌だったんですか?」

思わずぽかんとして半平太さんを見ると、その頬は薄らとピンク色に染まっていた。子どもみたいな彼が何だか可愛くて、私はついくすっと笑い声を溢してしまった。

「……。小娘」
「ごめんなさい。だって…きゃっ」

くるっと身体が反転したかと思うと、半平太さんは少し意地悪そうな笑みを浮かべて私を見下ろしていた。そして、長い人差し指を私の唇に当てると、つっとそれを胸許に移した。

「今日は我慢しようと思ったのに…。だが小娘には、お仕置きが必要みたいだね?」

ベッドとの間に挟まれた彼の手がファスナーに触れ、静かにそれを下ろしていく。その音に顔が赤くなるのを感じながら、私は半平太さんの背中にそっと手を回した。

prev | top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -