両想い(3)


美しくライトアップされた遊園地は、昼間とは違う雰囲気を放っている。
幻想的な光景に、私の目は釘付けになった。

「きれいですね、武市さん」
「ああ、そうだね」

窓から真向かいに視線を移すと、彼は笑って答えてくれる。
武市さんと二人きりで観覧車に乗っているのが夢のようで、私の心は嬉しさで満ち溢れていた。

「そういえば、武市さんと高杉さんはお知り合いだったんですね」
「以前、一緒に仕事をしたことがあってね。先日会った時に、突然ここのチケットを渡されたんだ」
「ふふっ高杉さんらしいです」

彼との会話が進むにつれて、観覧車もゆっくり上昇していく。
私は膝の上の手をぎゅっと握り締めて、前の彼をじっと見つめた。

「た、武市さん…」
「…ん?」
「武市さんは、好きな人って…いますか…?」

それだけ言い終えると、私は膝に目を落とした。
心臓は壊れてしまうんじゃないかっていうくらいどきどきしていて、彼の返事を待っているのがとても長く感じる。

「…いるよ」

彼の声が耳に届いた瞬間、私の心臓は大きく波打った。
それと同時に、目頭が熱くなってきて涙が零れそうになる。

「そ、そうなんですね…」最初から、叶わない恋だったんだ。
頭ではそう考えてもショックを隠せなくて、瞬きをすると涙がぽたりと手に落ちた。

「その人とは、最近知り合ったばかりなんだ」

武市さんは更に言葉を続ける。

「なのに、気が付くとその人のことばかり考えていてね。だから、今日もここに来たんだよ」

その時、武市さんの手が私の手にそっと重なった。
私は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

「…僕は、小娘さんが好きなんだ」

私の目からはまた涙が溢れてきたけど、それはさっきとは違う意味の涙だった。

「君は…?」

彼は優しく微笑みながら、私の涙を拭ってくれる。
私は嬉しさの余り、彼に飛び付いて答えた。

「…っ私も…、好きです…」

そう答えた途端―
彼と私の唇が初めて重なった。


「―遅いぞっ!」
「ご、ごめんなさい…」

観覧車を降りたと同時に高杉さんから電話が掛かってきて、私達は叱られてしまった。
カナちゃんはと言うと、高杉さんに絶叫系の乗り物に連れ回されたらしく、少しふらふらな様子だった。

「カ、カナちゃん、ごめんね」
「あたしは大丈夫!…それよりも、上手くいったみたいで良かったね」
私の耳許でこっそりとカナちゃんが囁いた。
私はさっきの武市さんとの出来事を思い出して、更に顔が赤くなった。

「また、じっくり聞かせてもらうからねっ」

そう言ってカナちゃんは笑いながら、私の背中を叩いた。
だけど、あのことだけは彼女にも秘密にしようと思った。
観覧車で起こった、あの甘い出来事だけは…。

「小娘、どうかした?」
「ううん。何でもないですっ」

私は二人に気付かれないように、武市さんの手にそっと指を絡ませて、心に誓った。

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