私の居場所(2)


「カナちゃん…私達、ずっと友達だよね…?」
「当たり前でしょ!あたしの一番の友達は小娘ちゃんなんだから…」

カナちゃんの声は震えていた。
それでも、にっこりと笑ってくれる。

私はカナちゃんから離れて、涙を拭う。

「もう、行くね」
「…うん。ねぇ、小娘ちゃん」
「…何?」
「もしも…もしもだよ?小娘ちゃんが…いなくなっちゃったとしても…幸せになったんだって、思って良いんだよね?」
「!」

カナちゃんには、何でもわかっちゃうのかな…。
私は、笑顔で振り返る。

「うん!」
「そっか!じゃあ、いってらっしゃい!」

私はカナちゃんに見送られて、神社に向かって走り出した。



旅館から神社は遠くなかったはず…。
私は道を必死に思い出しながら、全速力で走る。

半平太さん…。
私が戻ったら、あなたはまた還れって言うのかな。
でも、何て言われたって私は絶対あなたの傍にいる。
だって…私が幸せになれるのは、あなたの傍しかないんだから。


気が付けば、夕日が辺りをオレンジ色に染めていた。
古びた神社に人影はなかった。
注連縄は…あの時結んだはずなのに、切れていた。私は、息を切らしながら、神社に近づく。

ここに来るまでに…考えていたことがある。
私は、あの世界で随分長い時を過ごしていたけれど…。
こちらの世界で私がいなかったのは、ほんの数十分だったみたいだ。
つまり、あちらとこちらの世界では、時間の流れが違う。

だから、もし還れたとしても、半平太さんに会える確証はない…。
それどころか…半平太さんが、結婚、してる可能性だって…。
そしたら…私はどうしたら良いんだろう…。

嫌な想像ばかりが頭を過る。
だけど…そんなことは、行ってから考えるしかないような気がした。
今はただ、半平太さんに会いたい一心だった。

私は、あの時と同じように、箱に乗って注連縄を結ぶ。
あの時は、猫のキーホルダーが見つかって欲しくてお願いしたけど、今は…。

―お願い、どうか私をあの世界に還して―

祈る気持ちで結んでみたけれど…。
何も、起こらなかった。

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