中宵詮議(2)


「さあ教えて。君はその質問に何て答えたんだい?」
「うう……」

瞼に落とされた唇の熱さに、心臓が壊れたように高鳴る。そんな私に更に追い打ちをかけるように、半平太さんはすらすらと恥ずかしい台詞を並べ立てていく。

「君は僕だけの物だと思っていたのに。あの男にもこの身体を触らせたのか?」
「ま、まさかっ...そんなことしません」
「では何と?怒らないから言ってごらん」

聞き分けのない子どもをあやすように優しく背中を撫でられ、私は下向きにぼそぼそと呟いた。

「わ、私が武市さんに飽きることはありませんって...そう、お答えしました」
「うん、それで?」
「え、えっと...」
「『どこまで関係を持っているのか』という質問には?」

淡々と尋ねる半平太さんに対して、私はそのときの状況を思い出して頭が沸騰しそうになる。

「こ、答えてないです」
「答えてない?」
「だってそんなの恥ずかしくてっ...。そしたら乾さん、声を上げて笑ってました」

呆気に取られて口を開けたままの慎ちゃんと以蔵の姿が頭に浮かび、この上ない羞恥心が胸を襲う。
そのとき、後ろに回されていた彼の手が項から腰を這い、反射的に身体が戦(おのの)く。

「どうしてきちんと答えてくれなかったんだ」
「ひゃっ...」
「小娘と僕は、ひとつの布団で語り合う仲だろう?もうあのときのように、罪悪感を感じる必要は何もない」

闇に慣れた目で彼を見上げると、悲しげな瞳と視線が重なる。
その顔に何て言ったら良いのか分からず、私は京都で半平太さんと高杉さんが喧嘩をしかけた「あのとき」のことを思い出した。

「半平太さんがあんなことを言うなんてびっくりしちゃいました」
「あのときも今も、本当のことだ。現に高杉さんがその後君にちょっかいを出すことはなくなっただろう?」

くすくすと笑い始めた半平太さんの胸を軽く小突くと、ふっと彼の手が重なる。

「嫌、なんだ。君を他の男に奪われるのは。こんな気持ちになるのは、もう沢山だ」
「半平太さん...」
「小娘が悪いんだよ?一体いつになったら君は僕を安心させてくれるんだい?」
「ご、ごめんなさい...。で、でも私が触って欲しいって思うのは武市さんだけなんです。それは嘘じゃないんです」
「ほう。...言ってくれたね」

つい饒舌になり、私は慌てて口を手で覆う。
意味深な笑みを浮かべた半平太さんは、剥がした私の手を頭の上に縫い付けた。

「これから同じ苗字になろうとしているのに、まだ僕は『武市さん』か」
「く、癖が抜けなくて...。ごめんなさい」
「...まあいい。それはそうと...小娘?」
「は、はい」
「君は僕が帰ってきてから、他の男の話をしてばかりだね」
「え?え?そ、そんなつもりじゃ...」
「頼むから、僕といる間は僕のことだけ考えていてくれないか」

掻き分けられた髪の隙間から、首筋をちゅうっと吸われる。
擽ったさに思わず声が漏れ、半平太さんはその反応に小さく笑う。

「可愛い声...もっと聞かせて」
「やっ...恥ずかしっ...」
「これから、もっと恥ずかしいことするんだよ?」
「......!?」
「だって小娘は、もう僕だけのものなんだから」

「覚悟、してね」と意味深な笑みを浮かべながら、半平太さんの指が唇をなぞる。
抗えない快楽に身体が痺れ、私は漆黒の夜に身を委ねた。

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