彼女の秘め事(4)
「武市さん」
「…なに?」
「お誕生日おめでとうございます!」
誕生…日?
「私の世界では、その人が生まれた日にお祝いをして、贈り物をするんです!私、自分の持ってるお金はこの世界では使えないから…働いて武市さんに贈り物をしたいと思ったんです」
今日はそれを買ってきたんですよと言って、小娘は僕に包みを差し出す。
「だが…なぜ沖田と一緒に?」
「ふふっ…それはこっちを開けてみて下さい」
彼女が指差した包みを開いた僕は、目が点になる。
「これは…あの店の菓子?なぜ僕に?」
「お誕生日にはケーキ…西洋のお菓子を用意するんですけど、京都のどこを探してもなくて…。それで、代わりになる物を探してたら、沖田さんに会って、おいしいお菓子のお店を教えてもらったんです」
私も食べたんですけど、すっごくおいしかったです!と続ける彼女。
「私、いつも武市さんにご迷惑ばかり掛けてるから…何かしたくて。…遅くにごめんなさい。それじゃ、おやすみなさ…」
僕は立ち上がりかけた彼女を咄嗟に抱き寄せた。
「きゃっ!あ、危ないです、武市さん!」
「ねぇ、小娘」
「は、はい。」
「僕は物よりも…」
一際小さな声で囁く。
「君が傍にいてさえくれれば、何も要らないんだ」
彼女は耳まで真っ赤にして、僕に答える。
「た、武市さん…もうっ何言ってるんですか!」
「何かしてくれると言うのなら…今宵は…ずっと傍にいて欲しいな…」
「も…う、今日は…特別、ですよ?」
彼女の優しい笑みに、いつのまにか黒い感情は消え失せていた。