※意味不明。所々気持ち悪い。






何時だったか、私が所属していたロケット団が壊滅した。
私の唯一の居場所であった組織。私の存在を受け入れない、腐りきった正義ばかりが漂う、吐き気をも催す、そんな世界の、唯一の居場所。
そこにいれば、私は私でいられた。私の信じる悪が正しいものだと、証明されたから。別にサカキ様に飼い慣らされていた訳ではない、あのお方は、そんな愚かなことはしない。ただ、あのお方と私が信じていた悪が、同じであっただけ。
そんな存在意義でもあった組織は、ラジオ塔を最後に壊滅した。二回目だった。
一回目はシルフカンパニーであった。当時まだしたっぱであった私は、レッドというトレーナーの襲撃に対抗しようと最前線で戦っていた。だが、もともと状態異常に頼っていた私の戦い方ではまったく歯が立たなかった。小手先など通じぬ相手だったのだ。愚かだった。後悔に気付いた時には、もう時すでに遅し。私はぼろぼろになった団服で街の路地裏で座り込み、警察から逃げているところだった。あの時は、口の中で胃液が充満して、ただただ吐いていた。久々の外界の空気に団を守れず、ましてや15歳にも満たぬ子供にやられた自分への嫌気も手伝って、私はぐちゃぐちゃだった。
二回目は私が幹部になったときだった。名前、忘れるはずもない。コトネ、コトネ、コトネ。確かあの時会ったレッドより、少し年上の16歳くらいの少女だった。初めて会ったのは、ヤドンの井戸だった。尻尾を平気にざくざく切り落とす我々を見て彼女は驚き、嘆いていた。かわいそう、やめてあげて。鬱陶しかったので切ったばかりのヤドンの尻尾を口に突っ込んでやるとすぐに吐き、その場に伏していた。生理的な涙を流したままの涙目で見られたときは滑稽すぎて、嘲笑した。正義ばかり追い求めるから痛い目に会う少女。それを攻める私。ああ可笑しい。次いでに腹を蹴り、腕を踏みつけてやった。これが今の世界に溢れる正義を信じた結果ならば、私はこの少女に同情しよう。全てを晒け出し、枷の外れた悪は、私を締め付けないのに。どうして信じるものは限られるのか。不思議なものだ。どうせ腐りきった正義に堕ちた少女なのだから、思い切り後悔させてやろう。どうすれば後悔の色に染まるだろう。そうだ、凌辱してやればいい。丁度いい。そう思い、倒れ腹を抱える少
女を無理矢理組み敷いて馬乗りになってやった。少女は青い顔をして何度も泣き声をあげた。ねえ、なにするの、やめてやめて。そうやって後悔すればいい。泣けばいい。嫌がる少女の服に手をかけた途端、爆音。私の部下がやられる音がした。焦げ臭い臭いが鼻をつく。不快。辺りを見回せば、散らばったヤドンの尻尾と倒れる部下たちのポケモンの山の向こうに懐かしい赤がいた。シルバー様。サカキ様の御子息。赤い髪は貴方が居なくなられた時から今まで、目に焼き付いて離れない。何故にここに。そうお聞きするとシルバー様は。その女を渡せ。と一言言って未だに私の下で震える少女を指差した。待て。私の質問にまず答えて頂かなくては。そう思ったときには、私はシルバー様のアリゲイツに突き飛ばされていた。背骨が軋む音がした。目線を戻せば、そこにもう赤はいなかった。私に反抗したことのなかった、シルバー様が初めて反抗した。理由は簡単だ。あの少女に感化された。それがわかったとき、また三年前と同じ、口の中が胃液で充満した。
ラジオ塔で再会したとき、少女もといコトネは私を見て、少しばかり震えていた。怖いのか。私も震えていた。怖い?寧ろ、楽しいのだ。その正義のヒーロー面している端正な顔が歪む、歪む。そのまま潰れてしまえ。私は貴方の端正な顔が嫌いだ。それについてるふくよかな耳も、桃色の柔らかな唇も高い鼻も長く揺らぐ睫毛も大きな茶色の瞳も。全てが嫌いだ。忌々しい。あのレッドと同じだ。綺麗で純粋な、周りの期待と愛を一身に受けた子供。私にはない。幼き頃から地を這いずり回るような生き方をしてきた私には。欲しいとも思わない。壊したい。潰したい。私の世界を壊す前に。その時、彼女のボールから光が見えた。目の前に立ち塞がるはゲンガー。不気味な笑みに、恐怖すら感じた。彼女は少し油断した私を見て、微かに微笑んだ。「あの時私は貴方に辱めを受けそうになって、とても怖かったよ。でももう怖がったりしない。私には仲間がいるから!」端正な顔が笑みを浮かべた。眩しくて目を閉じた。同時にゴルバットを出した。一瞬だった。ゴルバットはゲンガーの攻撃に
耐えられず、壁に打ち付けられていた。三年前がフラッシュバックした。気持ち悪い。吐きそうだ。また、まただ。また私は、こんな子供に居場所を潰されるのか。一人になるのか。社会から否定されながら、生きていかねばならないのか。散り散りにならねばならないのか。どうして邪魔をする。私はただ、
誰かに必要とされたかった、だけなのに。
私は本当に吐きたくなって、その場に倒れた。酸味が広がる。気持ち悪い。気づけば、私は吐いていた。止まらなかった。何って、涙が。敵の前でこんな醜態を晒すとは。天下のロケット団幹部が。聞いて呆れる。でもそれより、全てを吐きたかった。大丈夫ですか、コトネの声がする。背中を擦られる。やめてください、声が出ない。ああ、楽になってきた。だが、最悪な気分である。まさか敵に情けをかけられるとは。少し落ち着いた私を見て、彼女は安堵したらしい。また微笑んだ。純粋な笑顔だ。悪に染めてやりたいが、生憎気力が沸かぬ。さっさと行けばいいじゃないですか。心配なら要りません迷惑です。私はせめてもの嫌味を言ってやった。私に構うな。敵の癖に。私の世界に入り込むな。ご免なさい、行きますね。コトネは少し淋しそうな笑顔を見せ、階段を上がっていった。それでいい。そうしてアポロにやられてしまえばいい。彼ならやってくれる。彼女の足音が遠ざかっていく。後悔させるつもりが此方が負けてしまうなんて思ってもいなかったが、やはり神は私になど味方
してくれないようだ。私にあるのは敗北の未来のみか。報われない。笑わせる。糞喰らえだ。もうすぐ彼女の姿が見えなくなる手前、彼女は振り向いた。今さらなんなんだろうか。笑いにでも来たか。笑えばいい。だが彼女は全く逆であった。頬は涙に濡れ、口は曲がっていた。なんだ。同情なら要らない。やめろ。同情じゃないと、彼女は言った。悲しいのだ、と。何故戦わなければ貴方とわかりあえないんだろう。と嗚咽を漏らしながら、彼女は言った。私はヤドンの井戸で貴方と会ったときから、分かり合いたいと願っていた。さすがに貴方に処女を奪われそうになったときは怖かったが。それでも私は、貴方、ロケット団とどうしても分かり合いたいと思ってた。だけど、貴方は私を拒絶した。もうそうなったら無理よね。だから戦った。悲しかった。そう言った彼女は止めどなく泣いた。平和的解決を求めていたようだ。私と馴れ合いたいと。冗談じゃない。再び彼女は立ち上がり、階段を上った。振り向かなかった。止めるつもりはなかった。結局私と彼女は相容れることはなく、また
歩み寄ろうとも思わなかった。私は、悪で。彼女は正義だから。シルバー様は上手く感化され、もう此方側に戻られることなんてないだろう。残念だ、後悔、またしてしまった。あのあとラジオ塔は墜ち、私たちは散々に逃げた。途中で捕まる仲間が見えた。愚かな。助ける、なんてそんなことしない。悪だからだ。また路地裏についた。過呼吸になりそうなくらい息があがっていた。だが、不思議と吐き気はしなかった。吐いてきたのもあるが、それより、何かが吹っ切れたようで、何も吐かなかった。今頃コトネはどうしているだろう。きっと世間に崇められるだろう。ヒーロー扱いを受けるだろう。そして私は、これから悪として社会から否定されながら生きるのだ。這いずり回って生きるのだ。なのに不思議と身軽い。きっとラジオ塔で彼女から言われた言葉だと感じた。少なくとも、あの時私は誰かに必要とされていた。敵なのが残念だが。それでも私は、嬉しかった。悪は、悪として生き、悪で終わる。正義は正義として生き、正義で終わる。いつまでも変わらぬ理。相容れないからこ
そこの2つは存在していられる。溶け合うことのない対称的な存在。私は死ぬまで悪で、彼女は正義で。それで初めてバランスが保たれる。なら壊してはいけない。壊せない。だったら私は最期まで悪でいてみせよう。言うなれば、それこそが私の正義。そして、彼女の信じるものは悪なのだ。私は戦う。私の信じる正義を貫くためにも。もう戻らない、組織もボスも仲間も。きっとこれが本当の終末だ。だとしても、私はまだ存在している。敵対する者もいる。ならば私はそれを壊すまで。難しいことではない。這いずり回って生きてきた私だ、最期まで足掻いてやろう。きっとこれは、終わりであり始まりなのだ。基本的に私は無宗教だが、今なら、私はまだ神に見捨てられてなかったのかもしれないと感じることができた。見ていてくださいよ、いつか私の信じたものが、当たり前を覆すでしょう。報われない人生なんてないのですから。
もうあの時の吐き気はしない。酸味もしない。気分がいい。

見上げた空がこんなにも綺麗だと知った、初めての日だった。









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ワケわからないです。取り敢えずランスさんは色々苦労してそう。

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