昔から人が嫌いで。

トモダチはポケモンだけで。

全然平気だったんだ。

だってトモダチであるポケモンは、僕をいつも必要としてくれたから。

何も言わなくても、傍にいてくれたから。

ゲーチスは僕なんて、気にもしてくれなかったからね。
話すことも、王様になることばかりで。

確かに考え方には反対しなかったけど、やっぱり辛かった。

だって、父親なのに。
僕だって、本当に実の子供かは不明だとしても、名目上は、貴方の息子であったのに。


だから、決めたんだ。ヒトはトモダチを傷つける、悪いやつら。そんな奴等と馴れ合いなどしてやるものか、と。



「なのに、君は酷いや」

「……私のせいにされても」

僕は、隣でヒウンアイスを食べながら座っているトウコに近づいて話す。

彼女の頬が、赤い。
アイスクリーム食べてるくせに、可笑しいね。


「……照れてるのかい?可愛いね」

「……っ!ばっかじゃないの!?」


そっぽを向かれてしまった。

まあ、まだ顔の火照りが冷めていないのは、バレバレだが。


「……君が、初めてなんだ」

「なにが?」

トウコは相変わらず顔を他所に向けたまま、アイスを頬張っている。


「この際言ってしまうよ。僕は君にかなり執着している」

「!?」

トウコは驚いたのか、食べていたアイスを落としてしまった。勿体無い。


「なななっ!なにそれどういう意味よ!」


慌てる彼女は本当に面白い。

「僕にも、分からないよ。こんな誰かに執着心を抱いたことなんてなかったんだから」

「……好き……とか?」


私のこと。
俯いて、顔を真っ赤にしながら彼女は聞いてきた。
苛めたくなるね。本当に。


「さあね……僕は恋愛もしたことないからさ……」

「だよねっ!Nに限って有り得ないよね!」


トウコは笑いながら僕の背中をばんばん叩いてきた。かなり痛いんだけど。

それよりも、彼女の、どこか残念そうな笑顔のほうが気になった。

どうして、そんな悲しそうなんだい?


「トウコ」

「なにっ?あ、アイス無くなっちゃっよね!?買いにいかなきゃ……」

「トウコ!」


気づいたら、そのまま逃げそうになっていたトウコの腕を、強く握っていた。
放すもんか、と言わんばかりの力で。

なぜだろう。
きっとこのまま、トウコが消えちゃいそうな気がしたんだ。


「ねぇ、アイス買わなきゃ。貴方の分、買ってなかったし」

「いらない」

「あたしも落としちゃったし」

「なら僕も一緒に行かせてよ」


だから傍にいて。


「……本当にバカよ、バカN!あたしは貴方のママじゃないってのっ」


きっと貴方の執着心は、親離れ出来ない小さい子供と同じなんだ!

トウコは少しだけ笑って怒っていた。

分からないよ。

君に対する執着心が、恋愛感情なのか、親に対するものと同じなのか。

どちらも、知らないから。


「まあ、今はそれでもいいか……」


トウコは少し考えたあと、僕の手を握ってきた。


「貴方に必要とされるの、あまり嫌いじゃないから。貴方がいないと、私は虚しくなっちゃうから」


それは、同時に僕も必要とされてるってことだろうか。

そう思うと、何だか暖かくて。

僕も握られた手を、強く握り返した。



トウコは顔を赤くしつつも、曇りのない笑顔を向けてくれた。




ねえトウコ。


やっぱりまだわからない。


君に対する、この気持ち。



だけど、だけどね、


君がまだ僕を必要としてくれるなら。


自惚れても、いいかい?


ヒトと分かり合えるかもしれないって思ってもいいかい?


君に寄り添っていてもいいかい?



もしも、許されるなら、



君と笑っている未来を夢見ていいかな?










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