失恋
※シリウスが非道男



「シリウス…」

「あ?」

「明日ってさ、」

「?」


嗚呼、やっぱり忘れてるのね。


「明日、私達の記念日よね」

「そうだったっけな」


悪びれもしない態度が酷く憎い。

先週、シリウスが他の女の子と歩いてるのを見た。

驚きはしなかった。
いつかこうなるのは分かってたもの。
ただ悲しいを通り越して腹立たしいような。

それより、"まだ望みがあるかも"なんて思っていた自分はもっと腹立たしい。

自分の中で"記念日を忘れていたら別れを切り出そう"って決めていた。
でもなかなか切り出せない。
声帯が上手く動かない。

言え、言え、言え

まだ尚こんな男を好きで居続けるなんて苦しいだけなのに。


「シリウス、」


絞り出すようにした声は震えていた。


「別れて欲しいの。」


前が少しずつ見えにくくなってくる。

泣くものか、こんな男の前で。
泣くな、泣くな、泣くな


「ああ。」


"引き止めてくれるかも"なんて心のどこかで期待していたのかもしれない。
苦しい。


「じゃ、俺行くわ。」

「ええ、さよなら。」


前は曇ってほとんど見えなくなっていた。
ただ彼の影が遠のくのは分かった。


「最悪」


零れ出したら止まらなかった。
表情も鼻水も気にしない。
ただ、誰にも気づかれないように声を殺して泣いた。



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