「早く連れてきてくれてよかった。この状態ならすぐ治るわ。」


マダム・ポンフリーはリーマス君の左足に包帯を巻ながら言った。
よかった。


「ごめんね。」


これしか言えない。
これで嫌われちゃったら嫌だな。


「大丈夫だよ。僕こそ避ければよかったんだよ。」


それは無理だよリーマス君。
どう頑張っても背後から倒れた鍋避けれないよ。
どこまで人がいいの?


「あら!!」


マダム・ポンフリーが何か思い出したように声を上げた。


「ごめんなさい。私ちょっと呼ばれていたんだわ。席を外してもいいかしら?治療は終わったから大丈夫よね?またなにかあったらすぐ呼んでちょうだい!」


マダム・ポンフリー話ながら出て行っちゃった。
最後辺り声が遠のいて行ってたし。
てか誰に呼ばれたんだろう。
それすら言わずに行っちゃたわ。


あ、あれ?
これって、もしかして。

キョロキョロと医務室を見渡す。
そして確信した。

2人きりじゃないのよ!!!


ふとリーマス君を見ると目をきらきらさせながら食い入るように一点を見てる。

どこだろう?
顎?
口?
目より下なのはわかるんだけど…


…!?
ま、ままままさか、ち、乳なのか!?


乳見てると思い出すとそうとしか思えなくなってきた。
てかリーマス君そんな人なの!?
なんかショッ


「スリザリンなんだね」



……え?
あ、そっかそっか。
ネクタイね、ネクタイだったのか。
今日何回目かのほっとした瞬間。

…そうじゃない。
リーマス君、今私がスリザリンなんだねって言ったんだよね。

今まで自分がスリザリンってことで気まずいことなんかなかった。
でも、グリフィンドールとスリザリンは対立関係にあってリーマス君はグリフィンドールで私はスリザリンで私はリーマス君が気になってる訳で…あれ、意味わからなくなってきた。

とにかくなんか気まずい。
無意識に手で深緑のネクタイをぎゅっと握る。


「ちょっと!」

「わ」


いきなりリーマス君にネクタイを握る手をガシッと掴まれた。
わああああ。
なにこれ今日2回目なんだけど。
あ、で、でもこっちの方が断然いい。
リーマス君指綺麗。


「君も火傷してるじゃないか」

「あ、うん」


ジンジンと脈を打つ私の手。
さっき倒れる鍋に触れたとき火傷した。
ほんの少し痛い。


「マダム・ポンフリー呼ぼう」

「いやいや!そんな!大丈夫だよ。それに私の火傷なんか…」


リーマス君のと比べたら全然まし。
リーマス君の包帯の巻かれた足を見る。

私の視線を追ったリーマス君は苦笑いした。


「僕が手当てするよ」

「悪いよそんなの!」

「いいからいいから」


そういって素早く私の手を取って手当てをしてくれた。


「そういえば、」


リーマス君は手際よく包帯を巻ながら切り出した。


「僕名前聞いてなかった。」


名前って私のだよね。
勿論だよね。

「なまえ・みょうじ」


なんか自分で言うの恥ずかしい。


「僕リーマス・ルーピンって言うんだ。よろしく。」


すみません。
知ってます。
私なんかストーカーみたい。
勿論断じて違うけど。

リーマス君が近すぎて呼吸が浅くなる。
鼻息とか聞こえちゃ嫌だし。
気にしすぎかな。


「出来た。」

「ありがとう。」

「いえいえ、見てお揃い。」


私の手とリーマスの足を並べる。
「え」

「あ、下らないとか思った?ごめんね」

「ちがっ、そうじゃなくって!」


正直、その発想が可愛いと思った。
多分リーマス君だから。

でも、そんなこと言われちゃ私いつまでたってもこの包帯取れなさそう。
どうしよう、また顔が赤くなってきた気がする。


「お揃い、ね。」


私もリーマス君に包帯の腕を見せつけて微笑んだ。
他寮生に微笑みかけるなんて初めてかも。

あー、今日の私ったら全く私じゃないみたい。
全くスリザリンらしくない。
こんな所ベラなんかに見られたらなんて言われるかしら。

そんなことを考えながら赤い頬を冷やすために手の甲をあてがった。



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