<甘・ちょっとだけ卑猥>


「そのチョコ美味しい?」

「うん、とても」

「いいなー」


なまえの熱い視線が僕の手元へ向けられている。


「食べたいの?」

「いいのっ!?」


そのつもりだっただろと言えば照れ笑いをされた。
あからさまな確信犯も可愛いから許す。


「はい」

「あーん」


チョコを二かけ割って渡そうと顔をあげると口を開けて僕を見ているなまえがいた。


「僕に食べさせろって?」


なまえは口を開けたまま首を縦に振る。
口を精一杯開けているからなまえの奥歯まで見えて間抜けだけど僕にとっては愛らしく思えた。
かなり重傷だと思う。


「なまえは手の掛かる子だなぁ」


手に持っていたチョコをなまえの口ではなく僕の口に放り込んだ。
それを見ていたなまえは眉間に皺を寄せて口を閉じた。


「んむっ」


そんななまえに口付ける。
不意打ちと言ったようにキスをしているのになまえは目も閉じずに丸くした目で超至近距離に居る僕を見つめた。

だんだん息苦しくなってきたのか酸素を取り込もうとわずかに開いたなまえの唇の間からチョコレートを舌で押し込んだ。
咽せるくらい甘い香りが2人の間に香る。


「美味しい?」


唇を離してから半ば放心状態になっているなまえに問いかけた。


「ひ、卑猥っ!」


しかしハッと我に返ったなまえが発した言葉は質問と噛み合わない。
僕は美味しかったかそうでなかったか聞いているのに。


「美味しかったわけ?」

「それどころじゃないです」

「なに?まだ食べたいわけ?」

「ち、ちがうちがう!!」


必死に首を振るなまえの顔を固定してまた、チョコを加えて口づける。


「そういう事してってことじゃないってば」


顔を真っ赤にして怒るなまえに吹き出しそうになるのをこらえる。


「美味しかった?」

「ええ、もう驚くほど!」

「まだ食べる?」

「もういらない!!」



11/09/03/



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