Logic×赤褐色 企画 ひそ作



朝、大学に行こうと家を出ると廊下でばったりセブルスくんに会った。


「セブルスくん!おはよ!」

「ああ」


返事が冷たくても気にしない。
"壁があるほど恋は燃える"って言うじゃない。
あれ、少し違うかな?

思えば、セブルスくんに興味を持ってたのは会う前からか。

セブルスくんのことは同じアパートの、しかも私の部屋の隣にイギリスからの留学生が来るって大家さんに聞いて、会うまでずっと気になってた。
髪の色、目の色、性格。
私が抱くイギリス紳士像を勝手に築いてた。

実際に会ったお隣さんは全然違ったけどがっかりなんてしなかった。
寧ろ、もっと興味を惹かれた。


「おい」

「はい!」

「落としたぞ」

「あ!」


知らない内に落としていたらしい財布を渡される。
いつ落としたんだろう…?
でもとにかくセブルスくんは冷たい印象とは反対に優しい。


「そういうところ好き!」

「まだ言ってんのか」


軽いとか、冗談じゃなくて本気で好きなのに毎回のように流されてしまう。
セブルスくんは私を追い越して先に行ってしまった。





回覧板が回ってきた日はラッキーだ。
次のセブルスくんに回すため、セブルスくん家を訪ねられるから。

ピンポーン

チャイムを押すと中からガチャンという音の後ドアが少しだけ開いた。
チェーンがかけてあるからそれ以上は開かない。


「なんで毎回毎回チェーンかけんの?」

「いいだろ、別に」


こちら側より随分暗めの室内側からセブルスくんが話した。
姿は分かるけど、細かくは見えない。
目の保養になるなのに残念。


「チェーンかける必要ある?」

「じゃあチェーンかけない必要があるか?」

「私別に好きだからって襲ったりしないよ」

「そういう理由じゃない」

「ふーん。よくわかんないな」

「面倒くさいな、お前」

「"お前"じゃなくって"なまえ"だってば」

「うるさい」


ドアの隙間から室内に差し込む光がセブルスくんの顔を一瞬だけ照らした。


「あれ、顔赤くない?熱あるの?」

「違う。いいから回覧板さっさと回してくれないか」

「あーはいはい」


回覧板をドアの隙間から差し込む。


「本当に熱ないの?」

「ないっていってるだろ」


じゃ、さっき顔が赤く見えたのは見間違いだったのかな。
セブルスくん白いから、少し暑いとああなっちゃうとか。
まあ、いいや。


「じゃあねー」

「ああ」

「私に会いたくなったらいつでも訪ねていいのよー」

「ない」


バタンとドアを閉められた。
半分冗談だったのにな、半分。





日曜日、大学もバイトも遊ぶ予定もなくってすごく退屈。
寝るのも勿体無いし、何をしようかとゴロゴロしながら考えて、料理をしようと思い立った。

そうだ、せっかく作るからセブルスくんに持って行こうかな。
セブルスくんに会えるし、私だって料理できるとこ見せられるし一石二鳥じゃん。

気付いたらニヤニヤしてて、恥ずかしくなった。


材料、セブルスくんが食べそうなもの、私が食べたいもの、を踏まえてスコーンを作った。
これなら甘すぎないし。


ピンポーン

セブルスくんが出てくる前にさっと前髪を直してまだ少し温かいスコーンの入った袋を両手で持った。

ガチャンとまたチェーンをかける音がして少し残念。
まあ、セブルスくんだし仕方ない。


「スコーン作ったの」

「…」

「食べないかなと思って」

「…」


バタン


「え」


目の前で閉められたドアに唖然とした。
そんなに私が嫌い?
さすがにこれは響くな。
なんだか情けなくて、時間がたたないうちに自分の部屋に戻ろうとした。
あ、ちょっと泣きそう。
早く歩こうとしてものろのろとしか足が進まない。


「おいなまえ」


そんな私の名前を呼ばれて振り返ればセブルスくん。
もちろんつい数秒前に閉められたドアはまた開いている。
今初めて名前呼ばれたかも。


「入るか?」

「え」


さっきの行動の逆を超えたことを言われてよく訳が分からなくなった。


「うちで食べていくかってことだ」

「え、ええ?」

「別に無理して来なくていい。僕だってお前が一人でスコーン食べるのを哀れに思ったし、こんな量もらっても腐らしてしまうから誘っただけだ」


そういうことじゃなくって。


「いいの?」

「いいっていってるだろ」

「だってさっきは一度ドア閉めたじゃん」


少し涙声になって恥ずかしかったけど、きっとセブルスくんは気付かないみたい。


「これ取らなきゃ入れないだろ」


セブルスくんの指指すのはドアと繋がってないチェーン。
そう言えばチェーンかかってない。

そっか、チェーン外すためにドア一回閉めたのか。
自分の早とちりが否定されて安心した。


「入らないのか」

「は、入る!」


廊下を引き返すとセブルスくんがドアを広く開けてくれた。
今まで見たセブルスくんの部屋は、チェーンかけられたドアの隙間からだったから今目の前にある光景がすごく新鮮。


「あれ、やっぱり顔赤くない?」

「気のせいだ」

「そう?」


夢のまた夢だけど、今セブルスくんを私が好きなように、いつかセブルスくんが私を好きになってくれる日が来たらいいな。

目の前のセブルスくんがスコーンをかじるのを見ながらそう思った。


「どう?美味しい?」

「…美味しい」


11/05/02/



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