「ブラック部長…」
ドアを開けた先にはブラック部長がいて、更に体が熱くなる。
「みょうじさん大丈夫ですか?」
「すみません、休んでしま…」
眩暈に言葉が遮られる。
なんでよりにもよってブラック部長の前で。
「本当に大丈夫ですか?」
「あはは、少し眩暈しただけですよ。全然大丈夫です。もう治りかけですから。」
「そうですか?これ薬です。あとこれ…」
「あ、」
ヤバい。
強い眩暈に襲われて、まるで足下が崩れていくような感じがした。
なんでこうもタイミングが悪いのか。
ブラック部長が私の名前を呼んだ気がしたけど、意識は遠のいていく。
目を開けたら視界は真っ白。
馬鹿みたいだけど一瞬死んだのかと思った。
少ししてそれが自分の部屋の天井だって気付く。
「わっ」
その視界の中に突然現れたブラック部長に思わず声を上げた。
「大丈夫じゃないじゃないですか。突然倒れたのでびっくりしました」
またまた心配かけちゃったんだ。
困ったようなブラック部長と目が合って罪悪感が沸く。
「ごめんなさい」
「薬飲みます?何か食べましたか?」
「…いえ」
そういえば食べてなかったことを思い出した。
「プリンとか食べれますか?」
「え、プリン?」
「風邪の時ってプリンとかなら食べやすいかなと思って買ってきたんです」
「そんな気を使わせちゃって」
「いいんです、嫌いじゃなければ食べてください。食後の薬なんで」
「はい」
ブラック部長がベットの横に椅子を持ってきて座った。
今更だけど、この状況恥ずかしい。
ブラック部長の手からスプーンとプリンを受け取ろうとする。
「え?」
でも渡してくれる様子がない。
手を伸ばすと不思議そうな顔をしてはっとしたようにブラック部長が口を開いた。
「あ、自分で食べれます?」
「は、はい」
食べさせてくれるつもりだったのかな。
少し気まずさを感じながら私はプリンを受け取った。
「…」
おいしい…けどとても食べにくい。
ブラック部長が食べるのを見守っているから。
不思議と帰って欲しいとは思わないけど、恥ずかしい。
「あの…」
「はい」
「そんなに見られてると、は、恥ずかしい…です」
「あ、すみません」
また気まずい雰囲気になってしまった。
言わなけりゃよかった。
薬を飲んでから暫く他愛のない話をしていたら、少し眠くなってきた。
「僕はそろそろ帰りますね」
「ありがとうございました」
「いえ、お大事に」
自分でも何故だか分からないけど、気づけば背中を向けたブラック部長のスーツの裾を掴んでいた。
「あの」
「わ、ごめんなさい」
急いで手を離そうとしたけど、その手はブラック部長につかまれた。
「部長?」
「好きです」
「…!」
「みょうじさんのことが好きなんです」
「……」
「それじゃ、お邪魔しました」
ブラック部長は押し黙ってしまった私の返事も聞かずに部屋を出て行ってしまった。
最後まで何も言えなかった私は混乱ですっかり目が覚めてしまった。
11/04/27/
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