目が覚めたとき、体の異常に気がついた。
節々が痛い、のどが痛い、頭がボーっとする。

もしやと思って、体を起して体温を計った。

“38.2℃”

これはキツイはずだ。
足取りもおぼつかないし、会社も休むしかない。
確かに昨日薄着で外を歩いたから、

昨日…

思い出したくない事を思い出して、尚更意識が朦朧とする。

取り敢えず会社に休む事を連絡しなくちゃいけない。
よろよろとベットに戻って携帯を手にする。

会社の番号を電話帳から探って通話ボタンを押す。
早朝だから、会社への電話は今日当番になっているだれかに転送されるはずだ。
聞こえてくる呼び出し音を聞きながら、心のどこかでブラック部長が出ないことを祈っていた。


「はい、もしもし×××株式会社です」


祈れば祈るほど叶わない事って多い。
昨日から耳に残っているテノールボイスを聞いてそう思った。


「…おはようございます、みょうじです」

「おはようございます、どうかしましたか?」

「申し訳ないんですが、ちょっと今朝から熱がでちゃって、有給頂いてもいいですか?」

「それは構いませんが、大丈夫ですか?」

「ええ」

「何か困ったことあったら必ず連絡ください」

「ありがとうございます」


“何か困ったこと”があっても、連絡なんてできない気がする。
ふと、お互いがお互いの事に踏み込み過ぎていないか心配になった。

でも朦朧とした頭は正常に働く事も出来ずに、重い体を布団へ入れた。
体はきついのに何故か眠る事が出来ずに、ただ白い天井を見つめていた。
時々、昨日の事を思い出して一生懸命考えようとするけれど思考が追いつかない。


「薬…」


薬を飲んでいないことを思い出した。
明日まで休みたくないから早く治したい。
薬箱をかき回してみても風邪薬がない。
そういえば、この前風邪引いたときので最後だったんだ。
症状的には今回の方が重いのに、とため息が出た。

外に買いに行くのはきっと無理。
誰かに買ってきて貰う他ない。
ふと浮かびあがったブラック部長の顔を打ち消して、同僚にメールをした。


『風邪薬がないの、悪いけどもしよければ仕事帰りにでも買ってきてくれない?』

『お安いご用!お大事にね〜!』


数分もしないうちに帰って来た返事にほっとして寝がえりをうつ。
眠くはなくても目を瞑っていればいつの間にか意識を手放していた。





メール受信の軽快なメロディーで起こされた。
さっきより症状が悪化している気がする、頭がボーっとするだけでなく、痛い。


『残業頼まれちゃった…。早く行けそうになかったので部長に頼んだよー。ごめんね!』


え…?
ちょっと理解できない。
部長ってブラック部長?
頼んだって、うちに来るって事?


ピンポーン


痛い頭で必死に考えているうちに、チャイムの呼び出し音が部屋に鳴り響いた。



11/04/23/



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