「ねぇねぇ」


後ろで男子の声がした。
まさかとは思ったけど振り向くとブラックが立っていた。

最悪。


ここで弱気な顔見せちゃ舐められる
…気がする。
下らない考えかしら。
でも威嚇しといて損はないはず。

弱気なスリザリン生なんてスリザリン生じゃないわ。

あくまで強気な声で。
眉間に深い皺を作って。
低い身長も背筋を伸ばして少しでもカバーして。


「何?」

「今さっき俺のこと見てたよね」

「は?」


つい間抜けな声が出た。

だって。だって。
おかしいでしょ。
どんな自惚れ野郎ですか。


「いやいや、だから俺のこと見てたじゃん」


いやいやいやいや。

"じゃん"じゃないわよ。
てか私はそのこと聞いてるんじゃないし。
いくら何でも言ってる意味は分かるっての。
なんだか笑えてきちゃうわ。

笑いをこらえて誤魔化しにブラックを睨んでたらいきなりブラックが1歩詰め寄ってきた。
近っ。
息が詰まる。


「俺に興味あんの?」


囁くように言ってきた。
さらに近っ。
ないでしょ。
まじでやめてください。
誰か助けて。

今度は腕を掴まれた。

わあああっ。
やめてやめて。
お嫁に行けなくなるじゃないのよ。

いい加減に頭にきた。


「ちょっと離し」

「またやってるのシリウス?」


最後まで言わせて。

しかし助け舟が来たことには変わりない。
ブラックが振り返てる間に思いっきり腕を振り払った。
びっくりした顔で振り向いたブラックの顔を一瞥。
してやったり。


「大丈夫?」


お礼の一言二言言うべきかしら、と助け舟を出してくれた相手の顔を見上げる。

…かっこいい。


「嫌だったらはっきり言わないとこいつは引かないよ」


「あ、うん」



初対面の他人にドキドキするなんて私ったらどうしたんだろう。

鳶色のフサフサした髪。
白い肌。
ぽてっとした唇。
少し眠たそうで優しい目。
整った顔立ちに見とれてしまう。
かっこいいし可愛い。


そしてタイプ。


「ちぇ、邪魔すんなよ」

あ、こいつすっかり忘れてた。

「邪魔ってったって、この子嫌がってたんじゃないの?」

そうよそうよ。
それから、お前はもう消えていいんだけど。

「まぁ、気になるならいつでも俺に声掛けてよ待ってるからさ。俺、シリウス・ブラックてんだ。」

「え、いや」


"結構よ"って心の中では叫んだ。
"誰があんたなんかに興味あるもんですか"とも。

でもブラックの隣に立つその人が気になって言えなかった。
せめてもの抵抗にこっちは名乗らないことぐらいしか出来なかった。

何いい子ぶってるんだろう私。



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テーマ「人外ファンタジー」
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