「…なにそれ…」
唖然としている私からやっと出た言葉にブラックとポッター君が顔を見合わせた。
「そんなに知られたくなかったのか?」
「でももう本当に色んな人が知ってるよ?」
どうやら、2人は私の気持ちを勘違いしている。
私は怒ってるとか悲しんでる訳じゃなくて、ただ訳が分からないだけ。
何で私とリーマス君が?
確かに一緒にホグズミードへ行った。
でもホグズミードへ行く男女がカップルなわけじゃないし、それも大体の人がわかってる。
前にブラックっと噂になった。
あれはブラックが猿みたいなあの女じゃなくて私をかばったから僻んで妙な噂を回したってことは分かる。
でも、今回は誰が?
リーマス君のファン?
でも、リーマス君の親友のブラックまでそう思いこんでるって一体どういうこと?
あああ、もう訳分からない。
私は"考えるより行動"ってタイプじゃないけど今はその私じゃないみたいだ。
背中で、ブラック達の声を聞きながら走り出した。
走って、走って、走って。
ただ、リーマス君を探した。
ブラック達が知ってるって事はリーマス君の耳にも入っているはず。
リーマス君はどう思ってるんだろう。
会って話をすれば頭の中が整えられる気がした。
"浮かれた馬鹿な私が勝手にリーマス君と付き合ってるって言いふらしてる。"
なんて思っていたらどうしよう。
嫌な考えは振り払おうとしてもなかなか振り払いきれない。
段々と息が苦しくなる。
外は肌寒い位なのに額に汗がうっすら滲んだ。
立ち止まって渡り廊下の柱に手をついて外を見渡しながら息を整える。
第一こんな当てずっぽうに走り回ってリーマス君を探したって広い校内で見つかるわけ無いのに。
「なまえ?」
「え?」
おかしいくらいびっくりした。
あんなに必死に探していた人の声が後ろから聞こえて振り向く。
「リ、マス君」
「やっぱりなまえかぁ、どうしたの?なんか疲れてない?」
「あ、うん、疲れてる、けど、」
「大丈夫?そこ座る?」
優しい問いかけに必死に頷いてリーマス君が座った隣に座る。
ドキドキするのはきっと走ったからだけじゃないと思う。
「えっと…なんか」
なんと言えばいいんだか。
「その、なんか、噂聞いた?」
ああ全く。
迷ったくせに結局ストレートな言葉しか出なかった。
「どんな?」
「え、それは…」
リーマス君の笑顔が眩しい。
こればかりははっきり言い難いんだけどな。
「誰と誰が付き合ってる…みたいな」
「誰と誰?」
わざとなのかな?
聞いたこと無いわけないと思うんだけど。
でもここまで言ったからには、と変な勢いがかかる。
「…リーマス君と」
「僕と?」
"私"と喉まで出かけているのになかなかすんなりいかない。
でもチラリとリーマス君を伺えばじっと私の次の言葉を待っている。
私は俯いて小さな声で言った。
「わ、たし」
「なまえ?」
「うん」
恥ずかしくてやっぱり俯いたままだった。
私はとんでもない賭をしてると思う。
「ああ、知ってるよ」
「知ってるよね、やっぱり」
そうだろうと思ってたから別に驚きはしない。
ただ、今までにないくらい恥ずかしくて、恥ずかしくて。
さっきとはまた違った熱さがじわじわと体内を侵した。
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