「なーんか…」

気に食わないと思う私はどうかと思う。

最近リーマスとあの女の子がよく話しているのを見る。
名前は知らない。
知ってるのはリーマスと同じグリフィンドール生ってこと。


「はぁ…」


無意識のため息に気づいても隠そうとは思わなかった。
じっと見ていた私に気づいたリーマスが私に近づいてくる。


「なまえ」


同じ寮生、話すぐらい当たり前のこと。
誰も悪くないのに不機嫌な自分を抑えられない。
胸焼けのような不快感を感じた。


「あの子と話さなくていいの?」

「もう話は終わったから」

「ふぅん」

「もしかしてヤキモチ?」

「ち、違うわよ」


そうだよ。
他の子より私と話してほしい。
私にもっと構って欲しい。

私ってばいつからこんな束縛するような事考えるようになったんだろう。
頭に浮かんだ事はあまりにも自分勝手すぎて自分が嫌になる。


「……」

「なまえがヤキモチなんて可愛いね」

「五月蠅いってば」


まるで頭の中を覗かれているようで恥ずかしくなった。


「ヤキモチ焼かなくても僕はなまえの事だけから心配しないで」

「…止めてよそんなこと言うの、恥ずかしくないの?」


歯の浮くような台詞でも、私の心拍数は跳ね上がる。
正直…嫌いじゃない。
でも口には絶対出さない。


「でもこんな事言われるの、嫌ではないでしょう?」

「そんなっ」


否定しようとした瞬間腕を引かれて、気付いたらリーマスの腕の中にいた。


「ほら、ドキドキしてる」

「だってこれは」


リーマスの鼓動が聞こえないくらい、私の鼓動は強くて、早い。


「心配させてごめんね、でもなまえより他の子に構ってる訳じゃないんだよ」

「別にそんなこと気にしてない」

「本当?」

「本当」

「嘘だね」

「…っ」

「僕がなまえのこと分からないと思う?」


普通人の気持ちなんて読心術も使わずに事細かには分からないはず。
きっとリーマスが異常なんだ。


「言っとくけど、僕がすごいんじゃなくてなまえが異常なんだよ」

「…」


言ってもいない事を否定されて異常だって言われるなんて、腹立たしい。
それでも嫌いになれない私はよっぽどリーマスにどっぷりハマってしまったんだ。


「何で何もかもお見通しなのよ、馬鹿」


リーマスの腕の中で話す私の籠もった声に間を置いて返事が聞こえた。


「それは秘密だよ」




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