部屋に着く頃はなんだかクタクタで、夜ご飯も食べずに寝てしまった。
実はリーマスと出かけた日の後半ほとんど覚えてないけど、とにかく楽しかったことは覚えてる。
「なまえの寝顔にやけてたよ」
起きて早々ベラに言われた。
「わっ」
もう遅いとは十分知りつつも両手で顔を覆う。
寝顔がにやけてたなんてはずかしい…
「あと寝言言ってた」
「嘘!?」
それはいくらなんでもやばい。
リーマス君の事とかだったらもうやってけない。
「なんちゃってー」
けらけらと笑うベラに悪態を尽きつつ胸をなで下ろした。
廊下を歩いていたら時々、特に女の子が私を振り返って見たり、コソコソしていた…気がする。
まだブラックとの噂消えてないのかなぁ。
最近もう聞かなくなってきたって安心してたのに。
まあ、でも嫌がらせされるわけでもないし。
あんまりしつこく見てくる子には一瞥送るだけ。
「お、なまえー!」
誰だか分かりやすい声に前とは違って躊躇なく振り向く。
「あ、ブラック」
ブラックの隣を見ればもう一人グリフィンドール生。
「へぇ、この子がなまえかぁ」
メガネの奥から送られる視線が私の足元から頭まで撫でる。
何この人。
ちょっと不快。
「ジェームズってんだ」
何かを察したのかそうでないのか、ブラックが紹介した。
「ジェームズ・ポッター。なまえ、よろしく」
「…よろしく」
なんだか知らない人に知られてるのも変な感じがしてまともに目は合わせない。
「こいつがリリーの彼氏だぜ」
リリーって…
「…あ、あのリリーの!?」
「ははっ」
得意げで照れた顔がさっきまでのインテリな印象を打ち消した。
「てかお前ー」
「な、なに」
ブラックが突然ニヤニヤした顔で話し出すものだからびっくりした。
少し引いた。
「やったじゃねーか」
「おめでとう」
「は」
二人して何?
おめでたいことなんてあったかと最近の事を思い浮かべるけど特に変わったことはない。
「リーマスだよ、リーマス」
小声でわざとらしく耳打ちしてくるブラックにいつもなら腹立たしく思うだろうけど、今はどうでもいい。
「あ、ホグズミード一緒に行ったことか」
そんな大きなイベントを忘れるなんて、一生忘れられないくらい楽しかったのに。
「それだけじゃないだろ」
ニヤけ顔に小声で耳打ち。
2回目はさすがに少しイラッとした。
「は?」
それをあからさまに表に出すように眉間に皺を寄せる。
「おいお前、しらばっくれんなよ」
「結構いろんな人がもう知ってるよ」
「ハニーデュークス行ったこと?」
自分でいいながらそんなことではないだろうと思った。
「おい、恥ずかしがるなよ」
何これちょっとうざったいんだけど。
何のことだか分からないから尚更イライラする。
「付き合ってんだろお前ら」
「!?」
驚きで一瞬声が出なかった。
「誰が?」
「なまえ」
「誰と?」
「リーマス」
「はっ!?」
まったく身に覚えが無いことに思考回路は停止していった。
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