甘
「…ね、ぇ」
「何ですか」
「…」
返事が来ない。
人が返事しなけりゃ、無視だって騒ぐのに。
そう思って隣で芝生の上に寝転がっているなまえ先輩を見た。
「なまえ先輩?」
顔を覗き込めば、目をつぶって寝息をたてている。
「なんだ寝てるんですか」
「んーふふ」
寝返りをうつ。
寝言で笑うなんておかしな人だな。
そうは思っても無防備な先輩への愛しさも感じた。
「なまえ先輩…」
先輩の顔にかかった髪をそっとどける。
「好きぃ…」
寝言とは知りつつむず痒い気持ちになった。
日頃悪態しかつかない先輩がどうしようもなく可愛く見えた。
「もっとちょうだぁい…」
「っ!?」
辺りをキョロキョロ見渡して近くに人がいないことを確認した。
先輩いったいどんな夢見てるんだ。
聞いてるこっちが恥ずかしい。
先輩を起こすべきか迷う。
いや待て、なんで迷うんだ?
ここは起こすべきだ…
肩を揺すろうと手を伸ばす
「蛙チョコもっとちょうだい…うま…」
「…」
「ねぇ、怒ってる?」
「別に怒ってません」
「怒ってるじゃん!」
「…」
「てか私何かした?寝てたから怒ってるの?」
「…」
「蛙チョコあげるから許してよー」
「いりません、先輩の大好物でしょう?」
「すごーい!よく知ってるね!私言ったっけ?」
「さっき言ってました」
「え?」
「…」
さっきの気持ちを返してください。
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