最悪。
しばらく歩いて後悔した。
ろくに挨拶もせず店を出てきたこと。
リーマス君に話しかけたこと。
リーマス君に会ったこと。
そして、ハニーデュークスへ行ったこと。
考えてみれば、勝手に私が好きになって、つけ回して、嫉妬して…
それってただの一人よがりの恋だったってことよね。
今までの自分を思い出してすごく嫌になった。
「はぁ」
ため息が外気に触れて白くなる。
「寒っ」
急に体温が下がってきた。
「おいなまえー」
振り向かなくても誰か分かった。
だから、振り向かない。
「あっちへ行ってブラック」
「どうしたんだよ」
「あんたと今話したくないの」
「なんでだよ」
「なんでもよ」
私が歩く速度をあげてもブラックにとっては苦じゃないスピードらしい。
「あ、そうだハニーデュークス行ったか?」
「…」
「リーマス居たろ?」
「…」
「話せたか?」
「…」
「おい、なまえ本当にどうしたんだよ。お前、いつも以上に釣れねぇな。」
そう言ったブラックに肩を掴まれた。
「触らないで」
腕を振り払う。
絶対に振り向きはしない。
「おいなまえ!」
今度は無理やり腕を掴まれて、ブラックの方を向かされた。
「やめて」
「なまえ、お前泣いてんのか?」
「違う」
急いでブラックに背を向けた。
まだ、泣いてはいない。
「なんで泣いてんだよ」
「泣いてない」
「じゃ、なんで泣きそうなんだよ」
「うるさい」
「おいなまえってば」
「しつこいわね!そもそもあんたの所為よ!」
「な、何がだよ」
「私に変な期待させてさ、リーマス君とリリーって子が親しい仲って知ってたんでしょ!?ならなんで私をハニーデュークスへ行かそうとしたのよ!」
「違う」
「あんたの話は聞きたくない!それに協力も、もう頼まない!」
「おいなまえ、話を聞けよ」
「さよなら。もう話しかけないで」
「なまえ!」
「"さよなら"って言ったの」
ブラックはもうついて来ない。
本当に私は最悪だ。
悪いのはブラックなんかじゃない。
悪いのは私。
全部自分のせい。
それなのにブラックに八つ当たりした。
ブラックは親切心で協力してくれたのよね。
ブラックって結構いい奴だったのかもしれない。
そうは思っても、今更もう遅い。
"もう話しかけないで"
なんて言ったんだもの。
今日からスリザリン以外で絡んで来る知り合いも、好きな人もいない。
別に何ともない。
平和な日常がまた来ると思えば。
リーマス君の事は極力考えないように帰路を辿る。
少しでも考えてしまえば、リーマス君が好きな自分がいたたまれなくなって、また辛くなるから。
―――
「なまえ、アタシは夕飯行くけど」
「いらない。ベラは行っていいよ。」
「どうかしたの?」
「何でもないよ」
「そう?」
「ちょっと疲れただけ」
「ならいいけどさ」
そう、今日はすごく疲れた。
布団に潜って目をつぶる。
忘れよう、今日あったことも全部。
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