「なまえの好きな人って、俺だろ?」
「死にたいの?」
「冗談だよ冗談。リーマスだろ?」
唐突に出た好きな人の名前。
恥ずかしい。
とりあえず頷いて顔を上げずにそのまま俯く。
「そうかぁ、リーマスかぁ」
「ちょっと…静にして」
大して大きな声ではなかったけど、リーマス君に聞こえてしまわないかと神経質になってしまった。
「そうかぁ、そうかぁ」
「何よ」
「いやぁ、だってよぉ…」
「だから何よ」
「前からまさかとは思ってたんだよな」
「前って?」
「えーっと、なまえがリーマスに魔法薬学のとき熱いのぶちまけたときぐらいかな。」
「ま、まじで」
意外と鋭いのね。
「俺鋭いだろ」
「馬鹿でしょ」
でも、認めないわ。
「…」
「まぁ、あいつが飽きたら俺にしろよ」
「ないけどね」
「わからねぇぞ!」
そう言ってニカッと笑うブラックの顔を一瞥。
ふとリーマス君達の方を見ればいつの間にかいなくなってた。
嬉しいような、惜しいような微妙な気持ち。
「今週末、ホグズミート行ったときにハニーデュークスに来いよ」
「何でよ」
あんたとのデートなら願い下げなんだけど。
「来いよ」
「あんたが居るの?」
「多分」
「じゃ行かない」
苦笑いするブラック。
「リーマスが居るぜ?」
「リーマス君が?」
「あいつ、甘いもん好きだから。」
「まじで?」
「おう」
「本当に?」
「嘘ついてどうする」
「…か」
可愛い…
でもちょっとあの優しくて、おっとりした性格からか意外ではない。
「あ、でも」
「どうした?」
「…彼女と来るんじゃないの?」
「彼女?」
「リリーって子…?」
「あー、まぁ、取りあえず来いよ。」
「…」
「私服のリーマス見れるぜ」
「そ、そんなのの為に…」
強がってはみたけど内心リーマス君の私服とかちょっと気になる。
でもリリーって子とあんなに親しげだったしな。
まぁ、まだ付き合ってるかまでは分からないけど、あの子がライバルにでもなったら勝つ自信なんてさらさらない。
でもまぁ、取りあえず。
「考えとくわ。ハニーデュークス。」
「おう。」
色々考えたけど、リーマス君がリリーって子と付き合ってるなら、それから諦めればいい。
何故か今はあんまり傷つく気がしない。
勿論リーマス君のことは好きなんだけどね。
シシー先輩にも、"当たって砕ける"って言ったんだし。
実はこんなに行動的な自分にびっくりしてる。
「今週末、ベラもホグズミート行く?」
「行くけどなんで?」
まさかリーマス君に会いにハニーデュークスに行きたいなんて言えない。
「来週いとこの誕生日だからハニーデュークスでプレゼント買おうと思ってさ」
我ながら上出来な言い訳。
「行くのはなまえの勝手だけどアタシは行かないよ。」
「全然いいよ。どっかで時間潰してて」
ついてこられてもね。
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