「なまえ何かいろんな奴からジロジロ見られてない?」
「やっぱベラもそう思うよね。」
薄々そうかなとは思ってたのよね。
でも何故?
こっちは昼食食べてるってのに。
まったく心当たりがないんだけど。
「あの子?」
後ろでひそひそ話が聞こえた。
「そうそう。なまえって子だった気がする。」
おいおい。私ですか。
聞こえてますよ。
取りあえず聞き耳をたてとく。
「でもそれって本当かなぁ?」
「本当なんじゃない?だってレイブンクローの彼女よりその子庇ったらしいし。」
「じゃシリウスは、今度はなまえって子と付き合ってるのかぁ。」
「ちょっと!!」
「「ひっ」」
たまらず、大きな声と共に後ろを振り返った。
噂話をしていた子達はこっちが申し訳なるくらい怯えた顔をしていた。
「なにそれ?私がブラックと?無理無理無理。てかそれ何処情報?誰情報?」
"怯えてんじゃなくてさっさと答えなさいよ"
と喉まで出てきてそこで止まった。
もしこの有り得ない噂をリーマス君が聞いてたらどうしよう…
信じていたらどうしよう…
そんな事が頭を過ぎった途端それ以外どうでもよくなった。
キョロキョロと当たりを見回してもリーマス君やブラックの姿は見当たらない。
何もせずには居られなかった。
自分でも何をこんなに必死になるのか分からない。
兎に角今はリーマス君がこんなガセネタを知っていようと知っていまいと、信じていようと信じていまいと、リーマス君に"何かしら"を伝えなきゃって思った。
ベラに軽く断って席を離れる。
さっき以上の視線を集めてる気がした。
でも今の私にはリーマス君以外はカボチャ同然。
大広間からグリフィンドール寮へ向かってる途中できっとすれ違うはず。
注意深くゆっくり歩く。
「なまえ、なまえ」
誰かに呼び止められて振り向いた。
「あ、リーマス君」
まったく気付かずスルーしていたみたい。
リーマス君がにっこり微笑む。
なんだかとても安心する。
「この前ぶり」
「この前ぶり。今日は一人なの?」
「そうなんだ、なまえもどうしたの?」
「えっと」
まさかリーマス君を探しに来たなんて口が裂けても言えない。
「落とし物を…」
とっさに出た嘘。
なに言ってるのかしら私。
「落とし物したの?」
「あーうん、まぁ」
後に引けない。
「僕も探そうか?」
「いや!大丈夫だよ!」
「本当?」
「本当!」
「じゃ、見つかりますように」
「ありがとう。」
リーマス君は大広間の方へ歩き出す。
待って待って待って、目的が果たせてない。
「あ、そうだ」
突然リーマス君の方から振り向いた。
少しびっくりした。
「なんか、変な噂出回ってるみたいだけど気にしなくていいと思うよ。みんなきっとすぐ違うって気づくから。」
「変な噂?」
「そう、君とシリウスがっていう」
「あ」
やっと思考回路が追いついた。
そこでさっきまでの不安から解放された。
確かにちゃんと考えればリーマス君は噂を鵜呑みにする人じゃない…気がする。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そう言ってリーマス君が私の頭をポンポンと撫でた。
リーマス君はエスパーか何かだと思っていたところ、また思考が停止した。
あたま、なでられた!
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