「シリウスに触らないで!」
あんたの眼は節穴か何かなの?
どうみても私が触られてる側でしょ?
呆れと驚きで何も言えない。
「シリウス!この女が…この女が!!」
廊下にいる何人かの生徒は関わりたくないって言う感じで見て見ぬふり。
私が恥ずかしいじゃないのよ。
「ブラック、離して」
私はブラックの腕を振り払った。
黙っていればずっと掴みやがって。
数秒の沈黙。
「俺ちょっと見てたんだけどさぁ、」
だんまりだったブラックがやっと口を開く。
てか見てたのかよ。
「ちょっかいかけたのはそっちが先じゃん?それなのに寄ってたかっておかしくねぇ?」
「…っ」
4人は顔を見合わせる。
ほうら、ざまぁ見なさい。
ブラックもたまにはいいこと言うのね、とか小指先ほど思った。
「もう知らないんだからねっ!」
何が知らないんだかさっぱり意味不明だけど4人は早歩きで立ち去って行った。
「見てたんなら早く来なさいよ」
「見てなかった」
「は?」
「"見てたけど"ってのは嘘。」
「え、じゃ何でちょっかいかけたのが向こうからって知ってたのよ?」
「なまえからちょっかいかけることはねぇかなって思って」
「なにそれ一応私スリザリンなのよ」
「でも馬鹿じゃねぇだろ?」
「わかってるじゃない」
ちょっと見直した。
「この際だし俺と付き合ったら?」
前言撤回。
やっぱこいつ馬鹿だ。
この際ってどの際よ。
「あんただけは絶対嫌」
「絶対ってことはねぇだろ」
そう言って笑う。
馬鹿は振られても愉快ね。
「彼氏いねぇだろ」
「だから何よ」
「好きな人も居ねぇんなら俺にしとけよ」
「好きな人ぐらい居るわ」
「まじで?」
「あ」
しまった、失言。
「なまえ好きな人居るのかぁ。そうかそうか。」
「ちょっ、ちがっ」
ニヤニヤしてんじゃないわよ。
穴があったら入りたい。
「で、誰?」
顔近い。
無意識的に後ずさる。
「じょ、冗談よ」
苦しい言い訳。
「じゃあ何で顔赤いわけ?」
「それは…」
「俺が好きな」
「それは違う!」
「じゃ、誰が好きなの?いいじゃん、誰にも言わねぇし。」
「…」
「誰かに言ったとこで俺にメリットある?」
確かに…
「ない…かも」
「何なら協力してやるよ」
「本当?」
それなら話は別。
リーマス君と仲いいブラックの協力は大きい…気がする。
それにブラックの言う通り言いふらかしてブラックに得はないし。
行っちゃえ。
若干投げやり。
「私は」
「シリウスー!」
誰よ折角人が言おうとしてたのに。
「おぉ、リーマス」
リ、リーマス君!?
「あ、なまえも久しぶり」
「ひ、久しぶり!私用事あるから行くね!」
「おい、さっきの話は?」
「今度!」
背中で聞いたブラックの言葉に返事する。
だって人前で言えるわけないじゃない。
リーマス君の前なんて論外よ。
心臓がドキドキしてる。
「"さっきの話"って?」
「いや、こっちの話」
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