甘
「レギュラスくーん」
「…」
「レギュラス君ってば」
「…」
無視ですか。
先輩を無視するなんていい度胸してんじゃないのよ。
というかさ、一緒にいて本とか読んじゃうかなぁ、普通。
「今日のレギュラス君のパンツの色はぁ、」
「なまえ先輩ちょっと」
"シーッ"なんて唇に人差し指を当てる。
でも視線は本に当てたまま。
「あら、レギュラス君聞こえてたの?返事がないからすっかり聞こえてないのかと思ってたわ。」
「…」
また無視。
そして沈黙。
心折れそう。
第一、
"今度の日曜ちょっと散歩しませんか"
なんて言うから必死扱いて私服選んで来たのに。
ちょっと歩いたらこの始末。
なんか腹立ってきた。
これは、先輩としてなんか言ってやらなきゃ。
「レギュラス君さあ、そっちからデート誘ったのに本読むってどういうこと?別にね、無理にデート誘わなくていいんだよ。」
なんか天邪鬼になってきた。
けど、言葉は止まらない。
「私はレギュラス君のこと好きだからデートとか誘われると嬉しいんだよ。でもね、レギュラスが私と一緒に居て楽しくないならふごっ」
突然レギュラス君が私の口を手で押さえてきた。
変な声出たじゃない。
"ふごっ"ってあんた。
「なまえ先輩だけが好きだなんて思わないでください。」
そう言って私をじっと見つめた。
…?
先輩とはつまり私で、"私だけが好きって思っちゃいけない"と。
何を?
私の好きなもの…百味ビーンズ?
なんか頭が…回らない。
あと、少し苦しいです。
「ふふひへ」
"離して"って言ってもまた変な声が出ただけ。
レギュラス君はそんな私をフッと笑う。
なんだか恥ずかしくてレギュラス君から視線を逸らす。
「なまえ先輩」
優しい声、でも視線は合わせてやらないんだからね。
と、ゆっくりレギュラス君の顔が近づいて来た。
え、何何!?
「ふっ」
近すぎるレギュラス君を見れば私にキスしていた。
ただし、私の口を押さえるレギュラス君の手の上から。
なにそれ。
これじゃ意味ないじゃないのよ。
しばらくしてレギュラス君とレギュラス君の手は私を解放した。
新鮮な空気が口から入ってくる。
「ね?」
何が"ね?"なの?
というか、
「キスするならちゃんとしてよ!」
long / top / short