◎ハンドクリーム

「べちゃべちゃ」
「駄目、塗るの」
「うぇー」
「僕が塗ってるんだからいいじゃん」
「おじいちゃんの、におい」
「悪かったね、香料混ぜてなくて」
「すべすべ?」
「うん、ちゃんとすべすべになるよ」
「ふへへ」
「ほら、反対の手も出してごらん」
「はぁい」


◎やりたがり

「かして」
「いいよ、僕自分でやるし」
「やだ」
「仕方無いなぁーほら零さないでね」
「わー」
「ふふふ」
「て、かして」
「はいはい」
「すべすべに、なるよ」
「そうだね、君が塗ってくれるからね。そりゃすべすべになるさ」
「あとね」
「うん」
「おじいちゃんくさく、なる」


◎おじいちゃんの

「ねぇ桃タローくん」
「何スか」
「そんなにおじいちゃん臭い?」
「何が?って!臭い!なんかアレみたいっスよ。古くなった防虫剤入れっ放しの箪笥と湿布の混ざった臭いって言うか」
「わぁ微妙に的確」
「何なんスか」
「や、リコちゃんにおじいちゃんおじいちゃんって」


◎好きなにおい

「女のコってどんな匂い好きかな」
「アンタがわかんないんだったら、俺が分かるはずないじゃないッスか」
「や、女の人はわかるんだよ。相手がリコちゃんだから」
「本人に聞けばいいのに」
「聞いたさ」
「何て返ってきたんですか?」
「そよそよ」
「それは、匂いですか?」


◎そよそよ系男子

「ねーリコちゃん、こないだのさ、そよそよって何?」
「えー」
「えっ何そのこんな程度もわかんないとか信じらんない!みたいな目」
「そよそよはぁ」
「うん」
「みどりいろでぶぁーってなってきらきらしてるの」
「う、うん…?」
「はくたくさまも」
「うん」
「たまになる」


◎正体不明のそれ

「桃タローくん、僕ってそよそよ系?」
「いえ、どっちかと言うとそわそわ系です」
「え?落ち着き無い感じ?」
「まぁ、そう、ですね」
「ガビーン!なんかショック」
「反応が微妙に古いですね」
「何だろうなぁそよそよ」
「草とか木とか?」
「なぁんか、ちょっと違うみたい」





何だろうね、何だろうね。
そう言って頭を捻る僕と桃タローくんを見て、くふくふと楽しそうに笑うリコちゃんが「あのね」と声をあげる。
そうして僕らが期待した目を向けると、「ないしょなの」なんて小さな口を手で塞ぐ。所謂お口チャック。
そうか内緒なのか。その言葉を飲み込んだ僕が隣を見ると、同じように言葉を飲み込んだ桃タローくんが「あー、仕事、続けましょうか」だってさ。
結局なんなのか皆目検討は付かないけれど「いまはちがうの」って小さく言っていたから、まぁまたその時がくれば聞けばいいか、なんて思いながら僕は桃タローくんの後に続いて席を立ったのだった。


( それはね、かみさまのにおい )



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