あれ、泣きそうだ
「なにやってんだお前ら」
そう言って、苦々しげに白煙を吐き出した髭熊、もとい猿飛アスマの目の前に居る可愛いげない可愛い(突っ込むことなかれ)部下の二人…めんどくさがりと自称ぽっちゃり系コンビが「はい、あーん」をやっている様を見下ろした。
「なにが」
「だから、その、あーん」
ここは甘味屋で、アスマは任務後恒例の奢りの真っ最中で、そんな中でチョウジがシカマルにかいがいしく木のスプーンで掬った杏仁豆腐を食べさせている。
違和感ないのが逆に目についた。
「なんか変か?」
「僕がシカマルに食べさせてるだけだよ?」
「いや、その考え方自体がおかしいってことにいい加減気付けや」
苦い。
甘いものを食べている筈なのに非常に苦い。あとなんか酸っぱい。
そんな事を考えていると、今度はいのがぱっかりと口を開けた。
「あー」
「ん?ほれ」
そこに、シカマルが自分の白玉を放り込むのを見て目眩が増す。
なんだこれ、ありえねぇだろ。
「お前ら、それは親子か恋人がやる行動だぞ」
呟いた台詞に、三人が三人きょとんとした顔をして首を捻った。
アスマは漸く自覚したか…と息を吐いたが、残念。
それは思い違い以外の何物でも無かった。
「じゃあ僕シカマルと恋人かー」
サラっと、サラっと怖いことを言うのはぽっちゃり系の子供で、アスマはそれを聞いて飲んでいた茶を噴き出しそうになる。
けれど複雑なアスマの心情などもろともせず、更に追い打ちが掛かった。
「僕シカマル愛してるよ!」
「ん、俺もチョウジ好き」
「私もシカマル好きー。チョウジも愛してるわよー!」
ケタケタと笑いながら告白する姿に、今度こそアスマは完全に沈黙した。


(親子って選択肢はお前らに無いのか!)
END