【天使と悪魔の会話(悪魔←天使) 5題】
4.「身分の差なんて関係無いですよ」
「種族!種族の差ぁ考えろ!」







「あぁ、これでオレも思い残すことは無いよ。ナルくんの晴れ姿見れるんだから」
「俺は思い残すことがいっぱいです。つか思い残すことしかありません」
「ほらほらシカくんも飲んだ飲んだ!親子の契りだよ〜!」
「だから人の話しを聞けってこの馬鹿親子ぉおおああ!」
天界の一画、神の住まう神殿にそれはそれは悲痛な悲鳴が響き渡る。
引き絞るような叫びを上げているのは翼の白い天使が居る筈の居城に一人紛れている悪魔のものだった。
闇を溶かしたような真黒い翼に髪と目を持つ、地獄の長サタンの息子たる大悪魔……の筈の彼は現在、縄でぐるぐる巻になって豪奢な椅子に縛り付けられている。
その横に座るのは黄金の髪にサファイアの瞳を持つ見事な純白の羽根を持つ二人の天使。
天使たちのトップである神ミナトとその息子の四大天使の一人ナルト(現在絶賛求婚中)
「もう、そんなに恥ずかしがらなくても良いのに。あ、そっか、シカマルは親父と親子喧嘩したいんだな!」
「チガイマス」
「そうなの?ならもう一戦…」
「ヤメテクダサイ」
ちゃきっとどこから出したのか、神が持つには物騒極まりない刃物を手に握るミナトを見てシカマルはぶんぶんと激しく首を横に振って全身で拒絶の意を表す。
自分の運を使い果たすくらいの勢いで何とか一方的な攻撃から生き残ったと言うのに、もう一戦とか笑顔付きで言われたら間違いなく昇天してしまう。これ確実。
「ん!残念。でもオレとサシでやれるなんて将来有望だよね。嬉しいなぁ〜」
「あれは一方的なリンチだろ…」
げっそりとした風情で溜め息を吐き出したシカマルは祝言しなくちゃねぇとどこかウキウキとした様子で酒を進めてくるミナトを見て、それからちらりと視線をミナトと逆の方向へ向けた。
先程からいろいろ無理矢理無視して居たのだが、もはや無視を貫き通すのも困難な程にびしびしと伝わってくるビビッドピンクの視線が痛い。
いい加減腹をくくりゆっくりと焦点をあわせ……で、また目を背ける。
今、目を合わせた瞬間見てはいけないものを見た。
目の前の天使の夢見るような大きな瞳の中にふりふりエプロンハート使用を付けた天使の幻が見え、自分とナルトで暖かいご家庭が想像の中で築かれていた!
「お、落ち着け俺。はは、白昼夢とか冗談じゃねぇぞ」
何とかして誤解を解いて逃げ出さねば。
脅迫観念のようなものさえ抱きつつずりずりと椅子に縛り付けられたまま足を使って後退するシカマルだったが、しかしそれも目敏く見付けたナルトにより足を捕まれ動きを封じられてしまう。
「あっれぇシカマルどこ行く気?ウェディングドレスは二人で選びに行かないとダメだろー?」
「誰がそんなもん選ぶか!俺はお前なんかと一生を添い遂げるつもりはねぇ!」
ブスでもなく美人でもない、そこそこ気が回って静かな普通の悪魔の嫁さん貰って細々と今の階級のまま目立つ事なく過ごすと言う素晴らしい人生設計をこんな所で崩されてなるものかと言う思いをこれでもかと詰め込んで言い放つが…ナルトには全くこたえない。
それ所かマリッジブルー?なんて聞き返す始末だ。
「だいたいな、俺は上級でもまだ若造の普通の悪魔だぞ!でもお前は神の次、天界最上級職の四大天使だろうがッ」
種族は違う性別は同じ階級は雲泥の差。
例えそこに愛があったとしても隔たりしかないだろうに、勘違いでここまで来るなんて常識を疑う、と悪魔にしてあるまじき正道をこんこんと天使に言って聞かせるシカマルに、ナルトはフムフムと頷いてにっこりと天使の微笑みでもってスッパリと言い切った。
「身分の差なんて関係無いですよ」
「種族!種族の差ぁ考えろ!」
「うんうん、喧嘩するほど仲が良い、だね。何だかオレもクシナに会いたくなってきたなぁ」
「あんたもちょっとは息子の言い分を否定しやがれぇええっ!」
お前が気にするべき点はそこか、そこだけなのか!と。
一番重要ではなさそうな部分だけ重要視しているナルトにシカマルは泣いた。


END
多分うちのサイトで一番シカマルの人権が無視されてる話しですねコレ。
続きの御所望嬉しいです、ありがとうございました!