【天使と悪魔の会話(悪魔←天使) 5題】3 3.「うふふ〜全ては愛の為ですから」 「お前は俺を滅ぼしたいのか、そうなのか」 通行証を無くし泣く泣く、本当に泣く泣く天界に留まることになったシカマルは自分を引っ張るナルトのなすがまま半分真っ白な灰になりながら天界を飛んでいた。 あからさまにうきうきしているナルトに比べてシカマルは生きた屍そのもの。 なんだってこんな風になったかと言えば 「今から俺の家族にシカマルを紹介するからな〜」 とナルトが言ったから。 そう言われた瞬間シカマルは逃げようとした。そりゃあもう必死で。 しかしナルトは強かった。 本気で逃げ出したシカマルに追い付き暫くの攻防戦の後、見事捕まってしまったシカマルはナルトに強制連行されているわけである。 「お家帰りたいお家帰りたいお家帰りたい普通でありたい普通が良い普通が一番」 「あはは、シカマル緊張してんの?まぁ確かに緊張するよなぁ…息子さんを俺に下さいって言う訳だし」 「言わねぇよ!おかしいだろそれッ!」 「俺もシカマルのお嫁さんとしていつかサタン様に挨拶に行かないとなぁ」 「頼む、頼むから俺の話を聞いて下さい」 シカマルは恨んだ。 ナルトに出会うきっかけを与えくさりやがった脱獄集団と勘違いの原因を作った肉食スライムを。 地獄に帰ったら肉食スライム撲滅作戦を決行してやると私的な理由(別名八つ当たり)の被害者に選ばれた肉食スライムたちは地獄ですさまじい悪寒に襲われていた。 さて一人勝手にトリップしているとようやくナルトの家に着いたらしい、シカマルの肩をナルトが叩く。 「家に着いたぞ」 「帰りたい帰り………た…」 その台詞にまたトリップしそうになったシカマルが視線を前に向けた途端…視界いっぱいに入ってくるそれを見て本気で消滅したいと思った。 どっからどう見ても視界を埋め尽くすナルトの家は、神の住む神殿にしか見えないのだ。 「な、ななな、ナルトさん」 「ん?どうしたシカマル」 「あなたのお父様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」 片言の、何故か敬語で尋ねてくるシカマルにナルトはこてん、と可愛いらしく首を傾げながら口を開いた。 「ミナトだよ。神様の四代目」 「ナッルくぅーん、おっかえりぃ!」 ナルトの台詞が終わった途端、ばたーんと激しい音を立てて神殿の扉が開く。 勿論その扉の先に立っていたのはこの神殿の主たる、神。 何故か、何故か手に凶悪そうな武器を携えているのは無視するべきだろうかとどこか冷静なシカマルの脳が考える。 ある意味現実逃避だったのかもしれないが。 「ただいまクソ親父。彼氏連れてきた。ってか将来的には旦那だけど」 「うぉいっ!めんどくせぇこと言ってんじゃねぇよ!!」 ぎらん。 ミナトの目が、光った。 「なに、ナルくんの彼氏?へぇ…じゃあ君がシカマルくん?」 言葉は疑問形だが、手に持った凶悪そうな武器はぴたりとシカマルを捕らえている。 逃げたい。 敵前逃亡だろうがなんだろうが関係無い。とにかく逃げたい。 しかしナルトががっちり腕を掴んでいるので逃げられない。 「ナルくんと交際したければ僕を倒してもらおうか」 「出来るかぁぁあああっ!!」 相手は神様こっちは上級だがまだまだ若い普通の悪魔。 勝ち目なんてかけらも無いのは目に見えていた。 シカマルがナルトに逃がせ!と必死の視線を送る…がしかしナルトはぽっと頬を染めシカマルを見上げ言い放つ。 「うふふ〜全ては愛の為、頑張ってね、シカマル」 頑張れるか馬鹿野郎。 「お前は俺を滅ぼしたいのか、そうなのか」 そう言ったシカマルは、襲い掛かってくる神、ミナトの攻撃をひたすら避け続け更に誤解を深める結果になってしまったのは……言うまでもない。 END [戻る]
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