意味7 とりあえずシカクを落ち着かせ、部屋に結界を張り安心して話せる状況を作った。 「ナルト、おぬしも元の姿に戻るのじゃ」 「ナルト?ナルトって、あの、ナルトか」 そして全員が腰を落ち着かせ、三代目はシカマルを抱えたままのナルトに言う。 シカクが驚いたように銀の少年に目を向けた途端、ぼふんと独特の音を上げ変化が解け、煙りの中から現れたのはふわふわの金髪と青空色の瞳を持った小さな子供。どう見ても、片手で足りる位しか生きていない子供の登場にシカクは暫くぱちぱちと目をしばたかせたが、すぐにふぅ、と息を吐いてばりばり頭をかいた。 「ミナトと一緒かよ。ねちっこい血だな」 「わしもそう思う」 どこかで「二人ともひっどーい!」と声が聞こえた気がしたのは割合しておこう。 とにかく目の前のナルトを見て受け入れた大人は、三代目を除いて初めての人間になったシカクはその瞬間からナルトにとって十分信用に値する位置に移ったのは言うまでもなく。 これなら安心だと、横の、ぼんやりと座っているシカマルに抱き着いた。 何故かシカマルに触っていると安心するからと言う理由で、ナルトは今日会ったばかりだと言うのにシカマルにべたべただ。 「さて、シカクや。話してくれんか。このシカマルが幽閉されていた理由を」 「幽閉されてた理由は、わかりません。俺は、俺たちはシカマルは死んだと思ってました」 そう言ってシカクは下を向き、ぽつりぽつりと話し出す。 事の発端は、奈良家のしきたりにあった。 奈良家は影と薬を操る一族。うちはや日向などとは異なるが、それらよりも古くからその血は存在し名家旧家の中でも特殊な一族。 その一族では子供が生まれた際に影計りを行う。影計りとはその子供が持って生まれた影、すなわち闇の濃度を計る儀式で、それにより次期当主なるものを選別し力あるものを一族の重鎮へと置くのだ。 つまり、奈良一族は血統ではなく実力主義の一族。 しかしシカマルはその中でも異質で、影としての闇のレベルを遥かに越えた、影計りを行った一族の影すらも飲み込む深遠の闇を持って生まれてしまった。故にその力を恐れた一族の重鎮たちがシカクとヨシノを押さえ付けシカマルを奪って行ったのだと言う。 「成る程…ヨシノが気病みにかかったのはそう言うことか」 母親が我が子を奪われ、殺されたと知れば病みもするだろうと三代目は悲痛そうに呟いた。 シカクも、ぎゅっと拳を握り締める。 「あの頃俺は、まだ一族の中でも立場が弱かった為に爺共の意見に逆らえなかった。逆らえばヨシノや親を殺すと」 「そうじゃったのか」 悔しそうに呟くシカクの肩に、そっと三代目が手を置く。 三代目からすれば息子と言っても過言ではない、ミナトと共にあった存在。 まさかそんな事になっていようとはと、頭を抱えたくなった。 何時でも、被害者は子供なのかと。 そうしていると、不意に今まで黙っていたナルトが口を開いた。 「おっちゃん、これからシカマルをどうするの。多分シカマルが消えたのバレてるよ」 そう、ナルトは言う。 確かに幽閉されていたのなら、誰かが食事の世話をしていた筈。 気付かない訳が無い。 ナルトのそんな問いに、シカクは下を向く。 今のままでシカマルを連れて帰ればまた確実に引き離される。下手をしたら今度こそ殺されてしまうかもしれない。 暫く、そんな考えに耽っていたシカクは、突然立ち上がると床に膝をついて三代目とナルト、そしてシカマルを見つめ口を開いた。 その顔は、覚悟を決めた者の顔。 「3年、待って下さい。その間に俺は奈良を変えてみせる。シカマルが生きていけるようにしてみせます。ですからそれまでの間、シカマルをお願い出来ますでしょうか。親として最低な事だとは分かっています。ですがどうか」 そう言い、シカクは額を床に擦り付けるように頭を下げる。 所謂土下座に、慌てないはずがない二人はシカクの頭を何とか上げさせ大丈夫だと、任せておけと言った。 むしろここでこれを断ってなにが火影だろう。幼子一人守れない者が、大勢を守れる道理があるはずが無い。 ナルトも同様に、ぽふっと小さな手をシカクの頭に乗せて言い放つ。 「おっちゃん、俺がシカマルを守るからさ、大丈夫!」 ミナトに良く似た笑顔で言うナルトにシカクは懐かしむように目を細めた。 「ありがとう…ナルト。流石ミナトの息子だ」 そしてシカクは笑いながらくしゃっ、と柔らかい髪を撫でる。シカマルの頭も同じように撫でれば今まで空虚を見つめていたシカマルの視線が初めてシカクに向けられ、じぃっと黒真珠の瞳がシカクを見て考え込むと、こてん、と首を横に倒して口を開いた。 「とー、しゃん?」 長らく使って居なかった声帯はひゅーひゅーと言う音を混ぜながら発せられるそれ。 今まで他人の会話なんて、二、三、見えない位置からのものしか聞いたことの無かったシカマルにはどうやって喋れば良いのか解らなかったが、今ここで行われていた会話を見て学習したらしい。 そんなシカマルを見たシカクは、ふるふると震えた。と思えばいきなりシカマルを抱き上げこれでもかっ!と言うほお擦りを始める。 「可愛いぞシカマル!!」 「あ、おっちゃんなにしてんの!?シカマル離せッ!」 「火影様、やっぱりシカマルは連れて帰ります!」 「だ、ダメダメダメ!シカマルは俺と暮らすの!」 「ムッ、ナル坊、シカマルは婿にはださんぞ!」 「やだ俺の!」 先程までのシリアスな空気はどこへやら、すっかり親バカモードに突入したらしいシカクと会って一日目で俺のモノ宣言をするナルト。 そんな二人を見ながら火影はカツン、とキセルを置いた。 「類は友を呼ぶ、か。シカマルは苦労しそうじゃわい」 予見師も真っ青なお告げは確実に未来のそうなるであろうシカマルへの労りが滲んでいた。 END [戻る]
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