意味6 「じっちゃん子供拾った!」 バンッと音を立てて開いた扉と飛び込んできた養い子の台詞と、その腕に抱えられた真っ黒な子供に三代目は飲んでいた玉露を勢いよく噴き出した。 「はぁ…」 ずきずきと痛む頭を抑えながら自宅に戻った老人、三代目はちょこんとソファーに座っている風呂上がりの黒い子供と、変化したまま子供の長い黒髪をわしゃわしゃと拭いているナルトを見て深い深いため息を吐く。 ナルトが拾ったと言った子供。 奈良の土地で鹿蹲と言う鹿、正しくは奈良の家に居る土地神のような存在なのだが、とにかくそれを知らないナルトは言われるがまま石牢に閉じ込められていたこの子供を連れてきたのだと言う。 頭痛がしないわけが無かった。 「よっしゃ、乾いた乾いた。やっぱ思った通り綺麗な髪」 んふふーと小さな子供を満面の笑みで抱きしめるナルト。どうやら自分も子供なのに子供好きらしい。本体を知っている三代目は苦虫を噛んだような微妙な顔でそれを見ていた。 昔、同じようなのを見た覚えがある。 間違いなくナルトはミナトの悪い(三代目にとって)部分を見事に受け継いだらしいのがありありと見て取れた。 「あ、そう言えばまだ名前言って無かったよな。俺はうずまきナルト。お前は?」 黒い子供、シカマルの脇に手を入れ持ち上げるナルト。視線を合わせるように抱き上げられたシカマルは真っ黒な瞳をナルトに向け、こてんと首を横に傾げ悩んだような間をあけたと思うと、ふるふると横に振って見せた。 それを見たナルトは視線を三代目に移す。 「名前、わかんないみたい」 「じゃの。しかしどうするのじゃナルト。奈良の土地におったのならその子は奈良の子。黒い瞳はまさにその証じゃ」 「でも、見捨てられない」 自分と同じ子供を、見捨てられるわけがないと。 理由は分からないが、受けている扱いは同じ。ナルトにとって見捨てると言う単語はその瞬間に消え去った。 視線で語るナルトに、三代目はそれ以上の口出しは出来なくなる。 「仕方ないのぉ…シカクに連絡を取るか」 「シカク?」 「奈良一族の者じゃ。あぁ、そんな顔をするでない。シカクはミナトの親友じゃった人間。真実を知っておる人間じゃから安心せい」 「…でも、奈良でしょ。この子、多分ずっと幽閉されてたんだ」 「何かあった時はアレじゃ。火影の権力は役に立つからの」 「職権乱用だね。じっちゃんのそう言うとこ好きだよ」 ナルトの笑顔に三代目はそうか、とだけ答えて連絡鳥の準備を始めた。所詮、この人も子供好きである。 しかもどんな理由があろうと幼子を幽閉するなど許される事ではない。 事と次第によっては…と考えている辺り将来のナルト像が見えてくると言うもの。つまり子供と言うのは身近な大人を見本にして育っていくわけだ。 さてそれから暫くして。 シカクが来ると言うことでナルトたちは火影執務室に移動した。勿論ナルトの腕の中にはシカマルがすっぽりと収まっている。離す気は無いらしい。 「奈良シカク、馳せ参じました」 そして、窓から声。 闇色の瞳に傷だらけの顔。尻尾のように頭上で一くくりにされている髪が特徴的だった。 「よぉ来た。このような時間にすまんの」 「いえ、うちの母ちゃんまだ伏してまして。病院帰りでしたから」 ぽりっと頬をかくシカクに、三代目はそうか、とだけ呟いた。 優秀なくの一だったヨシノ。しかし今は病に伏していると言うのは有名な話しだった。ただ、病名は三代目すらもしらない。 酷い精神的ショックを受けたと風の噂で耳にした程度だ。 「それで、ご用件は?」 「うむ…あの、子供のことなんじゃ」 そう言って三代目は火影室のソファーを指指した。 シカクが視線を向けると、銀髪銀目の子供と、黒い子供。 それを目にした途端、シカクは目を見開いた。 「シカマル!!」 続いて部屋中に響く叫び声。 シカクは目の前の三代目を突き飛ばして、シカマルを抱えるナルトの前に膝を突くとはらはらと涙を流しながら腕の中のシカマルの頬に手を延ばした。 「シカマル、シカマルだろ…良かった……生きてたんだな…」 その様子に突き飛ばされた三代目とナルトは、また視線を合わせるのだった。 END [戻る]
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