意味5 「どわぁぁあああ!」 どこまでも透き通った青空にぽっかりと浮かぶふわふわの雲。過ごしやすい気温の素晴らしい秋晴れのもと、本人の必死さを除けばあら奥さん今日も良い天気ねぇな日和である本日も、間抜けた悲鳴が火影邸の裏から響き渡った。 「おぉ、こりゃ相当遠くまで飛んだの」 ほっほっほと暢気に呟くご老体は星になった…正しくは星にした少年の安否を気遣うことなくひらりと裾を靡かせ執務室に戻っていく。 「今日はどこまで飛んだのかのぉ」 それはそれは、楽しそうな笑顔で。 さて、現在ナルトはあの一件以来目下三代目指導の元忍になるためあらゆる基礎を叩き込まれている真っ最中。 元々素質があったのと九尾の強大なチャクラ。加えてナルト自身も馬鹿みたいなチャクラ量なのであっという間に技を吸収。 三代目も面白がってあれよこれよとナルトに教え、そして今日のように吹っ飛ばす。 師弟関係を結んだ以上情け容赦は忍の為あらずと涙をのんで厳しい特訓を続けていた。まぁ前述したように面白がっているのに間違いはないのだが。 吹っ飛ばされる側としては堪ったもんじゃないと、特訓の為に青年の姿になっているナルトは宙を舞い飛びつつ腕組みをしてウンウンと唸る。 「また飛ばされた〜」 ひゅるるるる、と効果音でもつきそうな勢いで落下していくナルト。 流石にこのまま落ちると複雑骨折が待っているので体制を整え足にチャクラを纏わせスタッと着地する。練りすぎたのか、ナルトを中心に半径3メートルほどのクレーターが出来たのはご愛嬌。 「えっと、どこかなココは」 そのクレーターから脱出したナルトはきょろきょろと辺りを見渡す。 そして視界に入って来るのは鹿鹿鹿鹿の群れ。 辺り一面に立派な角を生やした鹿たちが突然降ってきた人間を警戒するように群れていた。 瞬間、ナルトの脳裏にはジビエ…なんてのが浮かんだのは内緒である。 「こんだけの鹿ってことは…奈良の土地か。随分飛ばされたな」 よっこいせとジジ臭い台詞を吐きながらナルトはてこてこと火影邸のあるであろう方向、つまり出口に向かってあるいていく。 鹿たちもナルトの敵意の無さに安心したのか、また散り散りになりはじめた。が、何故か一頭、一際大きな雄鹿…もうレベル的に鹿を通り越してトナカイじゃねぇのな大きさの多分鹿がナルトに向かっていく。 それに気付いたナルトがん?と振り返ると、鹿はガフッとナルトの襟首を噛みぶんっとナルトを宙に放った。突然の出来事に対処出来ず頭にハテナマークを浮かべたナルトはそのまま鹿の背中に落ちる。 「なっ、なんだ?」 さっぱり訳が分からない。 しかしなんだか逃げた方が良いような気がしてナルトは慌てて鹿から降りようとする……と、頭の中に何かが響いた。 『逃げないでくれ、九尾の子』 「は?」 それは、声。 耳に残る低い声にナルトは周囲を見回すが人影は無い。ならば空耳か?とも思ったがあまりにもハッキリと聞こえたそれが空耳だとは到底思えなかった。 ならば今この状況で声をかけてくる相手がいるとすれば…とナルトは視線を下げた。 「まさか、お前?」 『我が名は鹿蹲(ろくそん)そなたに頼みたい。我等が愛し子を救ってはくれまいか』 「愛し子?なに、どっか鹿が病気でもしてるっての?」 『否。愛し子は人。闇に愛されてしもうた、忌み子なり』 その言葉に、ナルトの表情が変わった。 忌み子…それはナルトには馴染み深い台詞。 「鹿蹲、その願いきいてやるよ」 『かたじけのう』 鹿、鹿蹲はゆるりと頭を下げた。 END [戻る]
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