意味2
そらのうえ。
まっくらやみ。
『つき』
手を上に上げて、鉄格子から見える暗闇を掴もうとする。
正しくは、暗闇にぽっかり穴を開けたように広がる金色の光の惑星。太陽の光を反射しているだけのそれは暗闇を優しく包むようにも見える。
もみじのような小さな手を石の壁にぺたり、と貼付けた。
どう足掻いたって、あの光には届かない。
『とどかない』
そして、手を伸ばした張本人たる幼子、シカマルは心中で呟くと、ぽてっと畳みの上に座りこんだ。
ぷにぷにの身体をそのまま仰向けに倒して、シカマルは鉄格子をから空を眺める。
そして、あくびを一つ。
退屈そうにシカマルは空を見るのだ。
じめじめした、俗に言う石牢に閉じ込められているシカマルにとって唯一許された自由がこの空を見上げる行為だけ。
石牢に閉じ込められた原因は知らないし、自分の姿も、名前も知らない。
ただ気が付いたらここに閉じ込められて、形程度の食事を与えられる。
いわく、食事を運んでくるやつはシカマルを闇と呼ぶので、自分が闇というものなのだと言うことは辛うじて理解できた。
『たいくつですね』
そして、何故か言葉の意味が分かる。
普通なら誰にも教えられず、本を見もせず、会話もせずに言語を操ることなど出来ない。
しかしシカマルは言語の意味をまるで知っていて当然のように理解している。理由はやはり知らない。
ただ漠然と、自分は闇と言うやつだからそうなんだろうな、と感じているだけだ。
『わたしは、なんのためにいきているのでしょうか』
声の出し方を知らないが故にシカマルは絶対に喋れない。だが思うことはできる。
『たいくつですね』
シカマルはまた、あくびをした。


END