なにがどうしてこうなった!? 「カヅキ先生、ヘルプ!」 「あぁ、またかこんちくしょう」 憂いに溢れた表情でうっとうしげに前髪をかき揚げながらシカマルはヘルプを頼んだ生徒の所へ行く為に椅子から立ち上がった。 ナルトとシカマルがアカデミーの教員になって早三ヶ月。授業も解りやすく、子供の視点にたって物事を見ることが出来るため(だって彼らは立派な子供だ)生徒からの信頼も厚く、二人が暗部の白陽と黒月だと知っている教員たちも同様。 更には二人の飛び抜けた容貌には感嘆しか漏れないと言う完璧さを発揮して非常に人気である。 「コヨウ」 「あ、カヅキ。悪い、まただよ」 「はぁ…ったく、めんどくせぇ」 そんな中、二人には少々困った出来事を抱え込んでいた。 「貧血だな」 「またやっちゃったんだよ」 目の前で幸せそうに倒れ込む生徒数名。顔がB級ホラーの如く赤に染まっているそれにシカマルは溜め息が止まらなかった。 倒れた生徒の顔を濡らした止血帯で丁寧に拭き、シカマルは腰のポーチから造血丸を取り出すとナルトにも半分渡し、生徒の口にほうり込む。 「飲ませた」 「分かった。そのうち目を覚ますだろ」 そして最後にシカマルが医療忍術で出血をしたと思われる鼻の粘膜を懇切丁寧に治療して地面に転がした。 その相変わらずの手際の良さに、そして二人揃っての登場に周囲の生徒はほぅっ…と熱っぽい息を吐く。 それに気付いたシカマルが嫌そうな顔…それすらもそこはかとない色気に溢れていて、鼻を押さえた。 「おい、頼むから鼻血出すんじゃねぇぞ。治療がめんどくさい」 「あぁっ、カヅキ先生が俺たちにご命令を!」 「守らなければ!死守せねば!」 「カヅキ先生の命令は絶対だ!」 「……相変わらず気持ちの悪い奴らだな」 ずざっ、と勢い良く生徒から離れるシカマル。ナルトもシカマル同様忠告して同じ状況に陥ったようで、へらへらと笑いながら気持ち悪そうに後ろに下がった。 二人の抱える困った出来事。 それはアカデミー生から崇拝だった。 ナルトが微笑めば、恍惚のまま鼻血を出し。 シカマルが何か言えば、軍隊も真っ青なやり過ぎな忠実さを発揮する。 初見でのアレも相当だったが、今現在も決して褒められるような状況ではない。 「なぁ、俺ら教育方針どっかおかしい?」 「知るか」 「この勢いのままホントなんでもしてくれそうだよな。シカマル、こいつらに上忍試験に受かる位まで強くなれって言ってみろよ」 「やめろ、冗談にならなくなる」 本当に、どこまでが冗談で済むかとそちらを模索した方が早いくらいだ。 確かに、二人の指導の賜物か、アカデミー生の実力、それも直ぐさま実践で使えるレベルにまでなっているのは教える側としても嬉しい限りである。 しかしこれは、実力はあるが性格に難有りは正直頂けない。 「コヨウ、お前が撒いた種だからな」 「賛同したカヅキも同罪だが?」 「なにを戯れ事を。私は最初に反対した筈ですが?」 ふふ、あははと、気付けば完全に仕事口調で互いに睨み合えばそれすら麗しいお二方の会話だ!と喜々として聞き耳を立てる始末。 「…うん、やっぱ選択間違ったわ」 「あー、めんどくせぇ」 しかしながらこんな事を言いつつ、結局二人は教員を止めること無くただひたすらに『暇潰し』をするために優秀な忍候補を作り上げていくのだった。 END [戻る]
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