舞姫と歌姫3 三代目特製の結界の張られた執務室は、どんよりと重たい空気で埋め尽くされている。 「ナルト…おぬしに言わねばならぬことがある」 「どーしたの」 「…もう一人の巫女が、死んでしもうた」 「はぁぁあ!?」 三代目からの突然の告白に、思わず素で叫んで手に持っていた任務書を床にばら撒いてしまった。 隣にいたシカマルも呆気に取られている。 「ちょ、ヨネさん死んだってどーゆーことだよじっちゃん!」 ナルトの言うヨネさんとは現巫女の片割れで、こちらもそこそこに高齢の女性だ。 ナルトはそのヨネから巫女の舞を教わり、明日がその本番たる奉納演舞と言うのに一体どう言うことかと問い詰める。 一週間前、最後に会った時は高齢ながらも元気そうであった筈だ。 ならば何故、とナルトが問い詰めると三代目は一枚の紙を差し出してみせる。 二人はそれを受け取り、中を見てア然とした。 「これ、は」 「『根』の者からの報告書じゃ。ヨネは内通者の身内であった為殺されたらしい……どこまでが本当か、分からんがな」 三代目の台詞にナルトはギリッと唇を噛んだ。 根と、それはつまりダンゾウが関わっていると言うこと。一ヶ月ほど前、ダンゾウに根へと誘われていたナルトはあの時最後にダンゾウの言った台詞が頭の中で響き渡った。 「あんの、クソ爺!」 八つ当たりのように報告書を引き裂き、それでも飽き足らず火をつけ灰すらも消し去ったナルトは頭をかく。 残念ながら証人は殺された後。暗部の任務は秘密主義。そして根の動向は火影ですらも掌握できていないのが現状。 ダンゾウが作為的に行ったと言う証拠はどこにもない。 「じっちゃん、明日の奉納演舞中止には出来ないよな」 「残念じゃが、無理じゃ。神域への道が開かれるのは明日の一日のみ。もし奉納演舞を取りやめれば木の葉に溜まった穢が溜まり不浄の地になってしまう」 この奉納演舞は特殊な場所で行われる。 普段はただの湖である場所、一年に一度だけ地下の空洞に溜まった水が満杯になるときにだけ現れる土地で行われるそこで、ただ神に祈りを捧げるわけではない。 神の土地を切り開いて作られた木の葉の里、その里に溜まった一年分の穢を掃う意味合いがあるのだ。 木の葉は神有地であるが為に穢を放置すると忌み土地、妖の好む土地になるか森が浄化の為里を被うか。 そうしない為にも、この奉納演舞を取りやめることは絶対に出来ない。 「他に、巫女候補の方はいらっしゃらないのですか?」 「…巫女が死んだ今、絶対にこの里のどこかにおる筈じゃ。しかし今からはどう足掻いても間に合わんじゃろう」 シカマルの言葉に三代目は首を振る。 どうすれば良い。 必死になって考えるナルトたち。そこでふと、ナルトが声を上げた。 「なぁじっちゃん、巫女の条件って、何?」 俺の腹には神様が居るから無条件で巫女にさせられた、と巫女の条件を聞いて居なかったナルトが首を捻る。 「簡単じゃよ。ようは神に愛されておれば良い。神に愛し子と言われた者は巫女の資格を持っておる」 「…………ん?」 三代目の台詞に、ナルトは何か引っ掛かるものを感じた。 愛し子、神に愛される…神、神と言えば土地神も立派な神様ではなかったか。 「…じっちゃん、巫女さん、見つけたんだけど」 その引っ掛かりは存外あっさりと解消された。 ナルトは軽く溜め息を吐きながらそれは誰だ!?と詰め寄ってくる三代目と、感心したようにナルトを見るシカマル…その内の一人、シカマルに向かってナルトは指を指してみせる。 「だから、シカマル」 瞬間、その場に沈黙が流れた。 「…ナルト、いくらシカマルと一緒が良いからと言って無謀すぎやせんかのぉ」 そんな沈黙を破ったのは、三代目。しかしナルトはぶんぶんと首を横に振って机に拳を叩き付けるとシカマルを指したまま話しを続ける。 「俺がシカマル拾った時に言っただろ!鹿蹲って言うデカイ鹿に愛し子を助けてくれって言われたからだって。鹿蹲は奈良の土地神だろ、ってことはシカマルって巫女の資格持ってんじゃん!」 「…………オォッ!!」 「へぇ、俺がナルトに見つけられたのはそう言う経緯があったんですか」 ふんっ、と誇らしげに言ってのけるナルトに三代目が歓声を上げた。 確かに鹿蹲は土地神、しかも九尾の支配する土地の土地神であるから神格も当然上位に位置する。 つまりシカマルは立派な巫女なのだ。それにナルトの練習、ヨネの動きや唄、笛なども間近で見て居たしナルトの練習相手をも勤めていたシカマルは今更練習の必要もない。 まさにこれ以上無いくらいの逸材だ。 「急いで衣装を調達せねば!」 「やったー!シカマルと一緒だ!」 ヨネの死への怒りから一転、上機嫌になってシカマルに抱き着くナルトをシカマルは撫でながら溜め息を吐いた。 「めんどくさいことになりましたね」 END ふぉおおっ、めっちゃ間が開きましたすんまっせん! まさか勢いだけで書いた最初の話しと繋がるとは…ふっしぎー [戻る]
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