拾ったものは ナルトと暮らし始めて二ヶ月がたった。 中々頭の回転が良いらしいナルト、今ではすっかりカタコトもなくなりそこら辺の子供より喋れるようになったし、シカマル指導のもと下忍トップクラスレベルの実力も身につけた。 あとは九尾のチャクラコントロールを完璧にすれば…と、新しいカリキュラムを頭の中でせっせと構築しているシカマルは現在、暗殺任務の真っ最中。 爺馬鹿三代目により与えられるナルトのお小遣によって新たに買われた紺色の簪…やはり鈴付きのそれを頭にさしちりんちりんと軽やかな音を上げて抜け忍集団を刈り取っていく。 「まったく、抜ける位なら忍にならないで欲しいものですね」 最後の一人を殺して、ピッと短く印を組めば死体に灯る青い炎。炎から上がる風に、鈴が鳴る。 シカマルはさぁ終わった終わった帰りましょ、と踵を返そうとした。が、その足はぴたりと動かなくなる。 「まだ、生き残りがいましたか」 微弱ながら感じる人の気配に、めんどくせーなぁと呟きながら歩き出す。 今だ燃える死体を避け、気配のする方に迎えばそこには縄で縛られた子供が二人。 黒髪と、桜色の髪の、多分男の子と女の子の二人。 「……見なかったことには、出来ません、よね」 はぁ、と思い溜め息をはいてシカマルは縛られている紐を解いて二人を両脇に抱えると鈴の音だけを残しその場から消え去った。 「三代目」 「おぉ、帰ったか黒月」 窓からぬっと顔を出したシカマルに三代目は茶を飲む手を止め顔をあげる。 そして、シカマルの両手に抱えられた二人の子供を見てぎょっと目を見開いた。 「黒月、誘拐は立派な罪じゃぞ!」 「誰に向かってそんなこと言いやがる糞爺」 あまりに失礼な物言いに思わずシカマルの敬語が剥がれ落ちた。ナルトの世話をするため黒月のまま、普段仕事口調である敬語でしか喋らないシカマル。しかし地に戻ると激しく口が悪いのだ。黒月の時に地の口調を出す時はたいてい本気で苛立っている時なので、三代目はうっと言葉に詰まった後すみませんと頭を下げる。 火影の威厳など、そこにはかけらも無かった。 「今日の抜け忍討伐の時に見つけたんです。多分うちの里の子供だと思うのですが」 「そうか…うむ、怪我などは無いな?」 「ええ。何らかの薬によって眠らされているだけのようです」 万が一なにかあってもシカマルなら治せるし、なによりシカマルの見立てに間違いはない。 三代目はそうかとだけ言い、シカマルから報告書を受け取ると二人の子供を見て、シカマルを見た。 「そうじゃの。その子供らの素性がわかるまで黒月、おぬしが面倒みよ」 「………うちには既に一匹居るんですが」 「おぬしが拾ったんじゃ。最後まで責任取らんか」 子供たちをまるで犬猫のような言い方の二人に、偶然任務報告に来た他の暗部が思わず突っ込みそうになったのはここだけの話し。 シカマルはにこにこと笑う三代目に心中で狸爺と呟いて頭を下げた。 「承りました」 「ではもう下がれ」 シカマルの返事に気を良くした三代目は殊の外楽しげな声で言い、シカマルはソファーに寝かせていた二人を抱き上げると執務室から出る。 だが出る間際、くるりと振り返り、鈴の音にまぎれるように小さな声で言い放った。 「覚えてろよ」 可愛いらしい鈴の音に乗せた、可愛いどころか恐怖しか残らない台詞をはいてシカマルは瞬身の術で家に帰る。 「……火影様、棺桶は四丁目の角の工房がオススメです」 「えぇいっ!古いネタを掘り起こすでないわ!!」 三代目の叫びは、しかし自業自得と言う台詞で片付けられた。 END お子様増量の予感 [戻る]
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