二面性1 月日は流れ今年でナルトとシカマルは4歳になった。 未だに狐と呼ばれ里人に暴力を受けたり鋭い眼差しを向ける者も居るが、その心根の優しさや他者を思いやる心を持ち可愛いらしい仕種等、理解をしてくれる大人(主に上忍たち)も増え人前で心から笑えるようになったナルト。 出会った頃とは違い自らの意志を表に出し、また普通の子供のような仕種すら無意識に行えるようになったシカマル。 里の罪が生み出した悲しい子供達は、しかしそんな苦を跳ね返すように成長し、そして力をつけていった。 そんな、何時も通りの日常。 しかしその日常を、子供達は今まさにぶち壊そうとしていた。 「ならん、ならんならん!」 深夜に響く怒声。 ここ2年ですっかり馴染み深いものになってしまったそれは、何時に無く慌てたようなニュアンスを含んでいた。 「なんでだよじっちゃん」 「良いじゃないですか」 ぷくぅっと揃って頬を膨らませる金と黒の子供は咎めるような視線をこの里の長である三代目火影に向ける。 「ならんといったらならん!暗部など、承認出来るわけが無かろうが!」 バンッと机に手の平を打ち付ける三代目に、二人が唸りながら口を開いた。 「もう俺達に勝てないのに」 「この前俺達にしてやられたのはどなたでしたっけ」 むぅむぅ唸りながら二人が矢継ぎ早に攻め立てていく。しかもなかなか痛いところをついて来るのだ、この二人は。 「忍不足だろ」 「我々はもう十分忍としてやっていけます」 加えてこの甘い誘惑。 確かに九尾の一件、それ以前の忍界大戦で忍不足はは深刻。 しかし、しかしだ。 三代目としては今まで目に入れても痛くないほど可愛いがってきた、孫同然のこの子供達の手を汚させるのは嫌なのだ。 そんな三代目の心情を悟ったのか、フッと二人から表情が消える。 一種、ぞくりとするような、人形のように整った顔のこの二人が表情を消すと何故か落ち着かなくなってしまう。それは三代目も例外ではなく、全てを見透かすような蒼の瞳と全てを塗り潰してしまいそうな黒の瞳を見ると完全に支配されてしまうのだ。 己の、感情を。 「俺は、俺と九尾を狙う里人、他里の忍を殺しました」 「俺は、俺を狙う一族と、血を欲する他里の忍を殺しました」 つらつらと、感情の無い言葉が重ねられる。 全ては己を守るために、既に他の命を奪い血に汚れているとでも言うような台詞。 三代目はそんな二人を、ただ見つめるしかなかった。 「俺の生きる意味は、大切な人たちを護ること」 「俺の生きる意味は、俺が生きることを願う人を護ることです」 「それを奪うと言うのなら」 「我等に死ねとおっしゃってください」 その瞬間、三代目は声を上げた。 「…もう、好きにせい」 疲れたように額を押さえながら、しかし確かに降された良しの言葉に今まで無表情だった二人の顔に喜色が浮かぶ。 「やった!」 「やりましたね!」 ぱしっと両手を合わせて喜ぶ子供二人。 先程まで火影すらも圧倒する雰囲気を出していたとは到底思えない変わり様にため息が尽きない。 だがここで妥協しては駄目だと、グッと拳を握って声を上げた。 「ええい落ち着かんか!今からわしの出す条件を守れんかったら暗部には入れんからの!」 「え、なになに、どんな条件?」 「野外任務無し、とかは受け入れませんよ?」 「わかっとるわい」 一瞬過ぎった考えはシカマルの鋭い一言により忘却の彼方に消え去る。 口や知識、先読みでシカマルに勝てるはずがない。 「条件は二つ。絶対に、木の葉に帰ってくることじゃ。そして帰って来たらわしに顔を見せること。よいな?」 その言葉に、二人はこれ以上ないほど綺麗に笑って見せた。 「了解、です」 「確かに、承知致しました」 くすくす、と笑みを零したまま言う二人に三代目も小さく苦笑を零した。 END [戻る]
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