「…はよ、なまえ」
「真澄くんおはよ」
「ん」
「あ、それレシピ?」
「そう。詳しいやつ」
「へえ…凄い、ほんとに本格的だ」

朝教室に入ると、真澄くんから声を掛けられるのと同時に渡されたのは昨日聞いたレシピだ
ざっと目を通しただけでも本格的だということがわかる
スパイスの名前や野菜の切り方、煮込む時間などわかりやく、かつ丁寧に書き込んである。なんというか真澄くんらしいレシピだ

「これなら誰でも作れちゃいそう…!真澄くんまとめるのも上手なんだね」
「別に、普通だし」
「ううん、すごいよ。真澄くんありがとう!」

…それにしてもこのレシピ、何だか自分用にしては綺麗すぎる気がする
私だったら自分で作るものだしもう少し雑になりそうなんだけど…
真澄くんは毎回アレンジ加えてるし、ベースのレシピがこれだから丁寧にまとめたのかな

「…アンタのアレンジとか、やってもいいから」
「ほんと?…うーん、じゃあ週2のうち1回目はこのまま作ってみて、2回目はアレンジしてみるのはどうかな?」
「わかった」
「よし、早速帰りに買い出しだね」

その後の授業は放課後の買い物やレシピの内容で頭がいっぱいだった
…こんなに授業に集中できなかったのは初めてかもしれない

「…!終わった、行こ」
「わ、ちょっと真澄くん早いって」

本日最後の授業のチャイムがなったと同時に真澄くんに手を引かれて2人で教室を飛び出した
真澄くん今日はいつもよりテンション高い…気がする

「とりあえずここ、スパイスの店」
「わー…!すごい!」

連れてきてもらったのは学校の最寄り駅から徒歩数分くらいの隠れ家みたいなお店。見た感じはオシャレな雑貨屋さんみたいで、言われないとスパイス専門店とは気が付かないだろう
入ると棚に綺麗に陳列されたスパイスの数々や奥には少しのカフェスペース。どうやら奥ではスパイスを使った軽食が楽しめるらしい

「初めてスパイスの専門店に来たけどこんな風になってるなんて…!すごく素敵なお店だね、真澄くん!」
「…アンタが喜んでくれたなら良かった。ほら、次もあるから早く」
「あ、そうだね。えっと…」

店長さんらしき人にレシピに載っていたスパイス数種類を伝え、必要な量だけ購入した。今度来た時は奥のカフェスペースにも行きたいな

「終わった?」
「うん、次行こうか」
「わかった」

私が買っている間、真澄くんは新しく入荷したらしいスパイスをチェックしていたらしい
…ほんとに監督さんが好きなんだろうな、さっきの真澄くん、すごく優しい顔をしてた

「…?」
「…どうかした?」
「ううん、何でもない」

…胸が一瞬痛くなったのは気のせいだろうか

「…なまえ、ほんとに大丈夫?…今日は帰る?」
「大丈夫大丈夫!ほら、早く行こう
「…アンタがそう言うなら」

きっと今日昼に食べたスープが濃かったから胸焼けでもしたんだろう
そう思い何事も無かったかのように振舞った

特別なレシピとお買い物

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