楽屋から飛び出して外に出て、近くにあった公園に飛び込んだ
夜だということもあり人気は少なく、静かな公園は落ち着くのに最適だった

「はあー…」

呼吸を整え、落ち着くと深くため息をつく
きっと劇団の人に迷惑をかけただろう
至くんにも、真澄くんにも悪いことをしてしまった
後悔と罪悪感でまた頭がぐるぐるする
ふと公園の入口に目を向けると息を切らした真澄くんがいて、目が合ってしまった

「…っ、見つけた!」
「ま、ますみくん…」

…どうしよう、とても気まずい
でもなんで、真澄くんはここにいるんだろう。まさか追いかけてきてくれたの…?

「真澄くん…あの…」
「…急に出ていくから心配した、どうしたの、至に何か言われた?」
「べ、別に何も無いよ?」
「なら…何でアンタは泣きそうだったの?」

指摘されて気づいた。私は泣きそうな顔をしていたのか
でもなんで、泣きそうになんかなってるの?自分で自分の気持ちがわからない

「あれ、な、なんで…」
「…アンタが悲しそうだと俺も悲しい」
「真澄くん…」

きっと真澄くんが優しいから、私は勘違いをしかけているのかもしれない
彼の隣にいるのは私だ、そう思ってしまっていた部分もあった
…そうだ、やっぱり至くんの言う通りだ。私は、真澄くんが好きになっていたんだ

「…なまえ?」
「真澄くん、追いかけてきてくれてありがとう。でもごめんね、私は君の友達失格だよ…」
「…どういう意味?」
「ごめん、ごめんね…真澄くんのこと応援するって決めたのに…っ」

涙が溢れて止まらなくなった
自分の気持ちに気づきたくなかった。だからこそ私は胸の痛みを気のせいだと思い込みたかったのだ

「ごめん、真澄くん、わたし…君が好きみたいだ」
「…!」

真澄くんが驚いているのが暗くなった夜でもはっきりとわかった
そりゃそうだよね、ずっと友達だと思ってたやつにこんなこと言われるなんて思うはずがない。これじゃあ真澄くんのことをかっこいいと騒ぎ立てる人たちと同じだ

「なまえ、泣き止んで」
「…優しくしないでよ、真澄くん…そんなことされたら勘違いしちゃうんだから…お願いだからもう放っておいて…」
「…嫌だ」

乱暴に目元を拭われたかと思うといきなり正面から抱きしめられる
突然のことに私はまたパニックになって、思わず涙も止まってしまった

「なまえ、落ち着いて聞いて?」
「ま、真澄くん…?」
「…俺、ほんとに監督が好きだった。」
「…っ」

久々に真澄くんの口から聞いた「好き」という言葉。自分の気持ちを自覚した今は胸の痛みが前よりも鋭く感じた

「し、知ってるよそんなこと…だからお願い、離して」
「好きだった、俺はそう言ったの。ちゃんと聞いてた?過去形になってるの」
「…へ?」
「…たしかに俺は監督が好きだった、けどアンタと話すようになってからはアンタのことで頭がいっぱいで、アンタの隣が居心地が良くて。そう思った時にアンタが…なまえが好きだって気づいた」
「…っ」

いま、なんて。自分の耳を疑った
今、私の耳がおかしくなければ真澄くんは、私のことが好き、って

「う、うそ…」
「嘘じゃない、嘘でそんなこと言わない。それはアンタもよく知ってるでしょ?」
「そ、うだけど、でも」
「俺はなまえが好き、アンタも俺が好き、両思いだよ」
「〜〜っ」

嬉しさと恥ずかしさといろんな感情が混ざって顔が真っ赤になる
そしてまた涙腺が緩んでしまって、涙が溢れだした

「なんで泣くの…」
「だって、両思い、だなんて嬉しすぎて、」
「…ごめん、早く言えばよかった。アンタが悩んでるって気づかなかった」
「ま、真澄くんは悪くない!私も相談すればよかったし…」
「いや俺が」
「いや私が…!」
「…このままだとキリがない」
「…ふふ、ほんとだ」

思わず笑ってしまった私を見て真澄くんは安心したように微笑んだ
その笑みは先程監督さんに見せていた笑顔よりもずっと優しくて、とても嬉しそうな表情だった
もしかしたら私は今までこの笑みに気づけていなかっただけなのかもしれない

「…改めて言うけど、なまえ、アンタが好き。俺と付き合って?」
「…私も真澄くんが好きです。喜んで」

そう返事をすると、真澄くんは今までで一番の笑顔を見せてくれたのだ

気付いた恋心と君の笑顔


もう少し続きます
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