『今日帰りにそっち寄るから』

LIMEで一言簡潔に送ってきた従兄はうちに来るらしい
きっと晩御飯を食べに来るのだろう
最近寮生活を始めたのはいいが、夜ご飯にカレーが多くて最近よくうちでご飯を食べるようになった
カレーが多いだなんて真澄くんみたいだな
なんて考えながら急いで帰る準備をして駅まで歩き始める
今日は久々にゲーム三昧で夜ふかし決定だ

「ただいま」
「おかえりー。そうだなまえ、私今日夜勤入っちゃったから晩御飯よろしくね。至くん来るでしょ?」
「えー、まあしょうがないか。わかったよ」
「ありがと!じゃ、よろしくね」

帰るとすぐに母はそう言い、部屋に戻って行った
きっと出かける準備だろう
父は今週は出張だし、夜更かしには最適の夜だ

「行ってくるねー!」
「行ってらっしゃーい」

さて、晩御飯は何にしようか
ここでカレーを作ったりしたら私は彼に怒られてしまうだろう
…いや、怒るというよりはゲームで連れ回されるな
私も普段は週2カレー生活なんだし何か他のものが食べたい
とりあえず冷蔵を確認して出来そうなものにしよう

「こんばんはー」
「あれ、至くん?早かったね。てか鍵は?」
「あー、叔母さんと入れ違いだった」
「なるほど、あ、今日何食べたい?」
「カレー以外」
「即答だったね…うーん、オムライスとパスタなら?」
「オムライス」
「りょーかい、今日はお風呂入る?」
「いや、シャワー浴びてきたから大丈夫」

はあー…と溜息をつき疲れ気味な彼はソファに沈みこんだ
今日は劇団で公演があったらしい
仕事の後だとキツイだろうな、お疲れ様です

「至くんー、できたよ」
「んーちょっと待って今行く」
「はいはい、ログボでしょ」
「そうそう。昨日からキャンペーン始まったの」
「へえー大盛り?」
「大盛り」
「やっぱお腹空くよねー」
「当たり前。いつもよりエネルギー使ったからね」

よし、終わりと言って至くんは席に着き食べ始めた
無言で食べ進める様子から結構お腹がすいていたみたいだ

「おかわりもあるからね」
「ん、今日はゲームする?」
「するー、何がいい?」
「じゃあ狩り行こ。素材欲しい」
「はいはい、後でね」

至くんとは沢山のゲームを昔からしているので私の腕前もなかなか良いほうだと思う
家にもいろんな種類のゲームがあるし、何より私もゲームが好きだ
ゲームを好きになった原因は至くんだろうけど

「じゃあ洗い物しておくから風呂入ってきな」
「はーい、よろしく」
「はいはい」

至くんは基本シャワーしか浴びないからすぐにあがる、もしくは劇団の帰りはシャワーを浴びてくるからあまり風呂を使わない
時々は入るらしいけど家で入るところは見たことないな

「あがったー」
「おかー、はいこれ」
「らじゃ」

一通りやった後、少し休憩をとった
ジュースを飲んでため息を吐くと、何故か真澄くんに今日感じたモヤモヤを思い出して胸がまた少し痛くなった
つけたテレビのCMの人がメッシュを入れた髪だったせいだろうか

「どうしたのなまえ、暗い顔して」
「んー…なんでもない」
「いや何かあるでしょ、そんな顔してる。ほら、話してみなよ、聞くくらいはできるからさ」
「…ありがと」

私は至くんに真澄くん(名前は伏せた)のことを考えると胸が時々痛くなること、その人が好きな人の事を考えている時にモヤモヤすること、などを掻い摘んで話した

「…なまえ」
「は、はい」
「………ほんとに分かんないの?」
「うん、分かんない」

至くんは真顔で言ったかと思うと、はあ…とため息を吐いて頭を抱えた

「お前そんなに鈍感だった?いや、昔はそうでもなかったような…」
「何言ってるの?」
「いや、もういいよ、うん。とりあえずなまえ、それは明らかにあれだよ」
「あれ?」
「恋、でしょ」
「………へ?」
「だから、なまえはソイツの事が好きなんだよ」
「…私が…彼を?」

そういうこと、じゃ、俺そろそろ帰るわ。そう言って至くんはさっさと帰り支度をした

「ほら、ぼーっとしない。鍵ちゃんと閉めてよ?」
「うん…」
「おやすみ、ちゃんと寝てね」
「うん…おやすみ…」

まだ呆然としている私の頭をわしゃわしゃと撫で至くんは帰っていった。
鍵はちゃんと閉めたけど私は頭がぐるぐるしていて自分がよくわからず、気がついたらベットに寝ていて朝を迎えていたのだ

オムライスはふわとろ派


※至さん夢ではありません
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