エンドロール終わらないで



 今朝起きてすぐに流し見していたテレビでは、私も当てはまる星座の人の運勢はやや不調、失せ物に注意だと適当につけたニュース番組の占いコーナーが告げていた。ラッキーアイテムは香水。いつも使っているから何かが変わるわけでもないし、気に入っているフラワーシトラスの香りを今日も1プッシュしてヒールを鳴らしながら連絡のあった場所へと向かう。

「刑事課2係苗字です、応援に駆けつけました」

 現場に着くと既に1係の監視官と執行官が計3名、丁度良く二手に分かれることができる。急いで向かった甲斐があったようだ。

「…どう考えてもおかしい」
「確かに、明らかに怪しいよね」
「志恩さん、この先地下の様子はどうなってるかわかる?」
「もう全然ダメ、ほんとにその先があるの?ってくらい情報がゼロよ」
「そっか…了解、ありがとう」

 常守さんと狡噛さんが最上階に向かい、私と縢くんは地下へと分かれた。深くに降りていく途中で見つかった更に奥深くへと続く道。
 志恩さんとの通信を一旦切り上げ、改めて地下へと続く階段を見やる。システム上、明らかにこの下に人の反応はあるのに構造が見えないなんて奇妙すぎる。まるでわざと建物の設計を隠匿しているみたいだ。
 どうしよう、何が最適だろうか。必死に頭の中で考えていると、ふわっといつもの香水の匂いが手元から香り気分が少し落ち着いた。

「今日も付けてくれてんの?俺のこと好きだねえほんと」
「私があげた香水を付けてる人に言われたくないよ。お互いさまでしょ?」
「はは、違いねえ」

 冷静に考えれば考えるほどこの状況は不可解だ。ひとりで判断するよりまず情報共有をしてから対処すべきだろう。何より本命の槙島は最上階にいるし、地下への入り口を張っていれば自ずと地下に向かった人もここを目指して戻って来るはず。他の経路を志恩さんに検索してもらってもし他ルートが存在するならそちらも制圧をして待機、これが現時点での最適な対応だと考える。

「…縢くん、この先に対象がいるとしてもこのまま2人で深追いするのは危険すぎる。通信が入らなくなるということはドミネーターも使えない。大人しく応援を待とう」
「…けどさあ、この先に今までの関連事件の犯人がいるんだぜ?ここで捕まえれなかったら、何か重要なものがこの地下にあってそこでやり遂げることがあったりしたら最悪だろ」
「…もし犯人やこの先で何か起こったとしたら、それは今引き留めた私の責任でいいから、ね?お願い」
「…名前ちゃんにそこまで言われたら仕方ねえか。りょーかい、大人しく上で待ってよーぜ」
「…ありがとう」
「いーよいーよ、刑事の勘ってやつ?」
「いや、どちらかというと…女の勘、かな」

 なんちゃって、と言うと縢くんは緊張がほぐれたのかいつもの人懐っこい笑顔でなんだそれ、と笑ってくれた。今頃朱ちゃんと狡噛さんは槙島と対峙している頃だろう。今はただ、2人の安否と槙島の確保が無事に行えていることを祈るしかなかった。

 正しい判断とは何を基準にして考えるのか、その答えは人によって違う。私は私にとって正しい判断をしたと思う。だけど、何故だか何かひとつ、選択肢が分岐したような、世界がほんの少しだけズレたような錯覚がした。なんとも言えぬこの感覚はわたしだけが感じているようで、隣にいる縢くんは既にいつも通りだ。何が変わったかもわからないけれど、不思議と地下へと降りていくあの奇妙で重たい感情よりはマシだと思った。

20200713
PP2期まで見終わった記念。
無意識に原作を変えてしまった
自覚のない転生主の話でした。


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