金色の王子さま


朝目が覚めたらなんといつもよりも30分遅く起きてしまった。飛び起きて準備をすませ、家を飛び出して学校へと急ぐ。昨日つい夜更かししてしまったのが原因かもしれないな。そう考えながら通学路を小走りで辿っていると黒服の、ちょっといかつめの人が沢山集まっているのが見えた。住宅地なのに何事だろうか近づいてみると、なんと人だかりの中心にいたのは綱吉くんたちだった。なにしてるんだろう

「おはよう綱吉くんたち」
「あ、おはようなまえちゃん!」
「よっ、この時間にいるの珍しいななまえ」
「ちょっと寝坊しちゃって」
「お、ツナ、この子もファミリーか?」

声をかけて近づき話していると、知らない声がして振り向くと綺麗な金髪の男の人がいた。すごい、王子さまみたいにかっこいい人だ

「はじめまして、みょうじなまえと言います」
「俺はディーノだ、よろしくななまえ。そんで、誰の彼女だ?」
「え?」
「だ、誰のでもないですディーノさん!あとファミリーとかも違うって…!」
「はは、面白い人なのな」
「おいそろそろ時間やべーぞ、10代目が遅刻したらどうすんだ!」

雑談をしていたら思ったよりも時間がギリギリになってしまった。ディーノさんに別れを告げて、3人と学校へ向かう。さっきの黒服人達も綱吉くんの知り合いとかかな。

「それにしても、獄寺くんはディーノさんのこと知ってたんだね」
「ええ、あいつが先代が傾けたファミリーの財政を立て直したのは有名な話っす。マフィアのキャバッローネファミリーつったら今じゃ同盟の中でも第3勢力ですしね」
「へーっ」
「どっちにしろ俺は好かねーすけどね」
「え…な、なんで?」
「年上の野郎は全部敵すから」
「範囲広くない!?」
「なあツナ、さっきマフィアって言ってたけど」

や、やばい、と思っている綱吉くんのことはつゆ知れず、私は獄寺くんが言ってた話の3割も理解できてなかった。

「つまりディーノさんはイケメンで頭がいいってこと?」
「ちっげーよ!お前ほんとに俺の話聞いてたか!?」
「うん、聞いてたよ」
「マフィアって…変な名前の会社だな!」
「あ、会社名だったんだそれ」
「いやなんで!?」

それにしても何の会社だろ。ディーノさんの見た目からしてモデルさんとかだと思ってたけど、頭がいいならIT企業とかかな。
そう考えていたら突然車がわたしたちの横に急停車し、窓から伸びてきたロープで綱吉くんが連れていかれてしまった。

「うそーーーー!!」
「10代目!」
「ツナ!?」
「綱吉くん!」

綱吉くんが連れていかれるのをただわたしは見ていることしか出来なかった。どうしよう、早く追いかけないと

「ありゃここら一帯を締めてるヤクザら桃巨会の車だな」
「リボーンさん!」
「ヤクザといえばジャパニーズマフィアだ。大人マフィアに中学生のお前達がかなうわけねえ。ここは警察に任せろ」
「任せられません!」
「警察は頼んだなまえ、あとは俺らに任せて待ってて欲しいのな」

そう言って2人は綱吉くんを追いかけて行った。追いかけたいけど行っても足でまといになりかねない。少し震える手を抑えて、携帯電話を取り出そうと鞄を漁る。

「リボーンくん、綱吉くん大丈夫、かな」
「心配いらねーぞなまえ。それに警察にも連絡しなくて大丈夫だ」
「え、でも」
「ツナならここにいるからな」

ヤクザ相手なのに2人で乗り込んでいって無事なわけないよ…と思っていたら今の話は作り話らしくて、リボーンくんのここにいる、という言葉を聞いて振り返ったらそこにはディーノさんと縛られた綱吉くんがいた

「綱吉くん…!」
「わっなまえちゃん!」
「無事でよかった。怪我してない?」
「だ、大丈夫だよ!」

見た感じ大きな外傷もないし、顔色も悪くない。よかった無事で…。それにしても

「ディーノさん、その、どんな趣向があるかは人によると思うんですけど…同意なしにしばるのはちょっと…」
「どんな勘違いーー!?」
「おいおいやめてくれ!俺にそんな趣味はないぞ!?」

趣味は人それぞれだからね、こんなやつには捕まっちゃダメよ。と以前ひなたちゃんに言われて見せられたまとめサイト?みたいなやつに縄で縛るっていう人がいたから、ディーノさんもそんな人なのかと思っちゃったけど
違ったみたいでよかった

「あいつらを試すためにやったんだ。悪かったなツナ」
「ためす…?ってふたりはどうなっちゃうんですか!?」
「心配ねーよ。桃巨会なんて架空のヤクザさ
今に諦めて帰ってくる」
「桃って美味しそうな名前だと思ってたら架空だったんだ」
「なまえちゃんそこー!?」
「ツナ、お前幸せもんだな。あんなボス思いの仲間にそうそう出会えるもんじゃねーぞ。それに、」
「わっ、ディーノさん?」

よかった、ふたりとも無事なら何よりだ。ほっとため息をついていたらディーノさんに頭をわしゃわしゃと撫でられた。少し雑だけど気持ちい。お兄ちゃんみたいだな

「こんなに心配してくれる可愛い仲間もいるんだからな。大事にしろよ?…あと、あいつらに取られないように頑張れよ」
「ディ、ディーノさん!?」

真っ赤になった綱吉くんを見てディーノさんが面白そうに笑ってる。ち、違う、いや違わないけどなんでー!?と叫んでいる綱吉くん。さっきディーノさんが綱吉くんの耳元で何か言っていたからその事かもしれない。ちょっと気になる。

「あ、そう言えば言い忘れてたな。桃巨会ってのは本当にこの町に実在するヤクザだぞ」
「なんだってー!?」
「何考えてんだリボーン!」
「もも…ほんとにあったんだ」

解決したと思って話していると、それだけ伝えて眠りについてしまったリボーンくん。どうしよう、やっぱり警察…?

「仕方ねえ、行くぞツナ」
「え!?」
「なまえは危ないからリボーンをツナの家に連れ帰ってくれ」
「でも危ないんじゃ…」
「大丈夫だ、終わったら俺らもツナの家に戻るから。な?」
「…わかりました、お気をつけて」
「おう!」

たしかにディーノさんは強そうだし、もしかしたら既に警察に連絡が届いてるのかもしれない。だったらわたしはもし怪我してる人がいたら治療できるように、綱吉くんのお家で待機していよう。

「男の子だからそういう年頃なのかもしれないけど、喧嘩も程々だといいな」

ぼそっと呟いた言葉を聞いて、なまえも山本と似て天然だな、と腕の中で眠るリボーンくんが思っているなんて全然気付かず急いで綱吉くんの家に向かった

 

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