嬉しい約束と子牛くん


今日は土曜日のため学校はお休み。特に何も用事がなかったので、来週末の差し入れのために図書館に料理本を借りに行くことにした。

「お菓子の本はどこだっけ…」

久々に図書館に来たから忘れてしまった。ここの図書館は結構広くて、昔はよく来ていたけど、最近あまり来れてないから少し迷ってしまったようだ。うーん…たしかこっちだった気がする

「あれ、なまえちゃん?」
「あ、京子ちゃん」
「わあ、偶然だね!なまえちゃんもお菓子の本借りに来たの?」

お菓子関連の本が並ぶ棚を見つけると同時に誰かから声をかけられた、と思ったら京子ちゃんがいくつかの本を持ちこちらに小さく手を振ってくれていた。京子ちゃんと学校以外で会うなんて初めてだな

「うん、今度野球部の練習試合見に行くからその為の差し入れ用に借りに来たの」
「わざわざ作っていくなんてすごいね!何を作る予定なの?」

京子ちゃんの大きくて綺麗なキラキラした目で見られると少し照れちゃうな。

「えっとね、はちみつレモンとカップケーキ。カップケーキは山本くん用で、多めに作ってひなたちゃんとかにもあげようかなって」
「ふふ、なまえちゃん、ひなたちゃんや山本くんとすごく仲がいいんだね。私も、もっとなまえちゃんと仲良くなりたいなあ」

京子ちゃん…!そう思ってくれるなんて嬉しい。顔がにやけちゃいそうだ

「わたしも京子ちゃん達ともっと仲良くなりたい…!あ、そうだ。京子ちゃんも良かったらカップケーキ貰ってくれないかな?それと花ちゃんにも」

あんまり料理はしないんだけど、お菓子作りなら少し得意。小さい頃の夢がパティシエールだったから、お母さんに付き合ってもらって作ったことが多いんだ。

「えっ、いいの?嬉しい、私甘いもの大好きなんだ!花もきっと喜ぶよ」
「じゃあ二人の分も作らせてもらうね。そんなに大したものじゃないけど…」
「全然大丈夫だよ、それに貰えるだけでも嬉しいんだから!…あ、じゃあ私も今日借りる本で何か作る予定だから交換しない?」

京子ちゃんお菓子作るの上手そう。交換とかバレンタイン以外でやったことないから楽しみだなあ

「うん、ぜひ!じゃあ月曜日に持っていくね」
「私も!楽しみだね」

2人でいろんな種類の本を見つけあって、今度は一緒に作る約束もした。それと京子ちゃんはラ・ナミモリーヌというお店のケーキがオススメらしい。今度買いに行ってみよう…!



夢中で話してると時間が経つのはとても早く、気づいた時にはもう閉館の時間だった。
京子ちゃんと図書館の前で別れて自宅への帰路につく。今夜ははお母さん達出かけるみたいだから晩ごはん作らないと…何にしよう

「全然泣き止まないな、こいつ…どうしよ…」

帰り道に河原沿いを通っているとふと、そんな声が聞こえてきた。あれは…沢田くん?

「こんにちは、沢田くん」
「うわあ!びっくりした…みょうじさんか」

近づいて声をかけると思ったよりもびくっとされてちょっとわたしもびっくり。

「急に話しかけてごめんね?」
「いや、大丈夫だよ!俺こそ大げさに驚いちゃってごめんね」

苦笑いする沢田くん…の隣に誰かいる。もじゃもじゃの髪の毛の男の子だ

「ねえねえ、沢田くん。この子だれ?」
「えっ、あ、えーと…コイツはランボ。なんて言えばいいんだろ…知り合いの知り合い?かな」

ランボくんっていうんだ。わたし最近小さい子に縁があるのかな、こないだもリボーンくんに会ったばかりだ。いやでもこの場合は沢田くんが小さい子に縁があるのか

「…というかすごく泣いてるけど…君大丈夫?」
「うっ、えぐ、ランボさんは強い子だもんね…ぐすっ」
「よしよし、事情はわからないけど大丈夫だよ」

頭を撫でてあげると少しずつ嗚咽が収まってきた。小さい子って頭撫でられるの好きだし、結構安心するんだよね

「ふふ、少しは元気出たかな」
「みょうじさんすげー…子供のお世話得意なの?」

うーん…得意、なのかな?親戚の子はたしかに懐いてくれてるとは思うけど

「どうだろ、あんまり考えたことないなあ」
「そっか…でも助かったよ!ありがとう」
「いえいえ。あ、そうだ」

さっきちょうど買い物した時に、とバックを探るとカラフルな袋が出てきた。

「はい、どうぞ、ランボくん」
「あ、アメ玉!ランボさんぶどう味のアメ玉大好物だもんね!」
「それは良かった」

好きな味だったみたいで、すぐに笑顔になったランボくん。可愛いなあ、にやけちゃいそうだ

「お前、なまえは?」
「わたしはみょうじなまえだよ」
「なまえ!アメ玉ありがとうだもんね!」
「いいえ、どういたしまして」

また1人、小さなお友達ができました。

「(ラ、ランボのやつみょうじさんの事気軽に呼び捨てしやがって…!)」
「…?どうしたの沢田くん、なんか顔が険しいよ?」
「な、何でもないよ!」


 

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