一番古い記憶は、燃える森だった。




僕はゲーチスに手を引かれて、奥へ奥へと走っていく。前足を怪我したヨーテリーが着いて来ているか不安で何度も後ろを振り返った。あのヨーテリーはやっと僕になついたのに。ああ、あのこを拾ったのもこの森だった。振り返っても炎しか見えない。

「ねえ、ヨーテリーは?」

僕の声はゲーチスに届いていたのだろうか。ばちばちと燃える樹の音が煩くて、そもそも僕の声は空気を震わせることができていたのだろうか。しかしあの時、確かにゲーチスは僕を見た。潰された右目を押さえながら、僕と真逆の色の左目で。



結局、ヨーテリーの行方は分からなかった。



(さよなら)







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