さよなら、とそれだけを残してお前が飛び立ってからまた1年が過ぎた。
16歳のガキだった俺も、ちょっとは大人になった気がする。少なくとも、アデクさんに勝ってチャンピオンになって、その重圧ってやつを理解出来る程度には大人になったつもりだ。

お前はどうだろう。ふらふらと全国を旅して、少しは何が変わったか?せめて早口で話す癖を直してほしい。あんなに捲し立てられては、まともにお前と会話も出来ない。でもきっと、大人になって帰ってきたお前を見たら、歳の差を実感して苛つくんだと思う。やっぱりまだまだガキなのかな。

この間、遂にゲーチスが捕まったよ。あいつも全国を逃げ回ってたみたいだ。もしかしてお前も何処かで会ってたのかな。案外、ゲーチスも逃げてたんじゃなくてお前を探してたのかも、なんて。俺は全然そんな風に考えたことなかったんだけど、ゲーチスが捕まった次の日に、ダークなんとかって言う三人組が言いに来たんだ。N様に会ったら伝えてくれ、ゲーチス様は決して貴方をバケモノ等とは思っていなかったと、ってな。何でもお前を探していたけど見つからなくて、もしかしたら俺の方がお前と会う確率が高いんじゃないかと思ったらしい。賢明な判断だと思う。

俺はゲーチスのことなんて何も知らない。知ってるのはプラズマ団の偉いやつで、お前に酷いことを言ったやつってだけだ。だからダークなんとかの言っていたことが真実かなんて分からない。でももし、真実なのだとしたら、あいつはもう一人の俺だったのかもしれないと、最近思う。あいつだって責任があったはずだ。たとえ壊滅したとはいえ、いや、壊滅したなら尚更、プラズマ団を復興させる責任があった。まあ復興されたら困るんだけど、例えばの話ってことで。で、責任はあったけれど、ゲーチスはそれを捨ててでもお前を探す道を選んだ。チャンピオンの責任に縛られ、ここに残った俺とは真逆の未来を選んだ。どちらが正しいかなんて俺には分からない。それに、きっと正解なんてないのだろう。もし正解があるのなら、どちらもの意見を受け入れること、その決意が正解だ。これはお前と出会ってから俺が学んだことのひとつだ。どう?大人になっただろう?



けれど、ふと考えることもある。もしもあの時、ゲーチスの様に全てを捨てて、お前を探しに行っていたのなら。ゼクロムに飛び乗るお前の腕を掴んでいたなら。



考えても仕方のないことだ。解っている、どんなに後悔しようとも過去は変えることはできない。そして、だからこそ未来は変えられるということも。
俺の未来はまだまだ決まっていない。明日会えるかもしれない。明後日会えるかもしれない。二度と会えないと決まった訳ではないのだ。


別れ際、お前は俺に夢を叶えろと言ったな。今でも寸分狂わず思い出せるさ。お前のことなら全て綺麗に憶えてるんだ。俺はお前の言葉通り、夢を叶えるために今日もここで待っている。早く叶えさせてくれないか。俺が責任を投げ出して、お前を探しに行く前に。

責任も果たせない様なガキじゃ、まだまだお前に似合わないだろ?








観覧車で待ち合わせ
(そしてもう一度)
(お前で俺の世界は回る)




2010/9/25
黒様キャラ模索中。

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