玩具の列車が軽快に走る。線路を塞がれたその存在は、行っては戻りを繰り返し。もはやどちらが前かも解らない。バスケットゴールにはブロックがネットに絡まっていて、ボールが通る隙間もない。使い古された茶色の球体は、所在無さげに床の上。


(……みにくい)

Nはバスケットボールと同じように床に転がり考える。存在価値を奪われたボール。ただそこに有るだけの球。かしゃんかしゃんと列車は走り続けている。


(…使われることのない玩具…、無意味、不完全な線路…)


目の前を列車が走り抜ける。しかし暫くすれば逆走する。否、正しくは前進なのか。分からない。部屋の主たるNにも、もう分からない。

(…分からない。僕は間違っている…?)




眩しい目をしていた。ただ真実を追い求める、進む方向を正しく理解している人間だった。心が揺らぐ。灰色の世界だ。憎むべき色。白黒はっきりつけなければいけないのに。
不確定要素は解を変える。その未来に僕の存在理由はあるのだろうか。いや、きっとないだろう。走る続ける列車。転がるバスケットボール。二度と使われることのない玩具達。


(醜い)


Nは思う。
僕もまた、この玩具と同じものに成ってしまうのだろうか。新たな世界。英雄は真実と共に立ち上がり、理想は崩れ去るのだろうか。悲しいと思う。悔しいと思う。ポケモンたちの解放。それは自身の生を賭けた願いだったのに。


遊ばれない玩具。
近い未来、自分がそんな醜い存在に成り果ててしまうというのなら。



(……はやく、)

(早く来てくれ、ブラック君)



かしゃんかしゃんと列車は走る。最後の時は近付いていた。





レーゾン・デートルと玩具の城
(せめて最後は英雄のまま)



2010/9/23
死にたがりN
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